スパコン「京」世界一への道
~科学技術と日本のあり方~
渡辺貞 「京」プロジェクトリーダー
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2011/9/22  1/3ページ

「地球シミュレータ」以来、7年ぶりの計算速度世界一を達成したスーパーコンピュータ(スパコン)「京」。

 理化学研究所(理研) 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部プロジェクトリーダーの渡辺貞氏は1980年代、当時所属していた企業のスパコン事業に携わって以来約30年、スパコン一筋で過ごしてきた。渡辺氏に、事業仕分けなどを乗り越えて計算速度世界一になった「京」の道のりを伺った。

1位を獲得して

―「京」が1位を獲得してしばらく経ちましたが、現在のお気持ちは?

渡辺氏:階段でいえば踊り場です。少しほっとした、というところで、まだまだやることはあります。


―7年前の「地球シミュレータ」の開発にも携わっておられましたが、「京」とはどのようなきっかけで始まったのでしょうか。


渡辺氏:「京」プロジェクトの公募があった際に文科省から声を掛けられて応募し、2005年末に会社を辞めて、文科省で統括することになりました。開発の主体は理研でしたので、2006年8月に理研へ籍を移し、今に至ります。

理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部プロジェクトリーダー 渡辺貞氏
理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
プロジェクトリーダー 渡辺貞氏

―プロジェクトに携わった方々はどのくらいだったのでしょう?


渡辺氏:理研のメンバーは、事務方を含め20~30人、あとは富士通側の設計と開発をしている方々を含めると200~300人です。ただ、半導体を作る人など、他のすそ野がありますから、合わせて1000人以上は携わっていると思います。


 JAXAの「はやぶさ」と同じで、理研が直接作っているわけではなく、あくまで発注側です。一生懸命作っていらっしゃるのはそれこそ町工場のようなところもあります。


―以前世界一となった「地球シミュレータ」との違いは?


渡辺氏:まず開発主体が違います。「地球シミュレータ」は、運用主体が海洋研究開発機構(JAMSTEC)で、あくまでも独立行政法人のプロジェクトでした。「JAMSTECのもの」なので、「地球シミュレータ」の利用用途は主に地球環境のシミュレートに限定されています。


 今回の「京」は、文科省における研究開発基盤を作ろう、という国家プロジェクトなのです。ただ、文科省ではできないので、理研が成り代わって進めている、ということです。ですから、「共用法」という法律も整備して、スパコンを広く使えるようにしています。

波乱の幕開けだった「京」プロジェクト

―「京」プロジェクトが始まった頃は順調だったのですか?

渡辺氏:いや、結構山あり谷ありで大変でしたよ。「京」は文科省が始めたプロジェクト、つまり国のプロジェクトで税金を使います。ですから、いろいろなところから評価を受けながら進めるという具合でした。


 民間のプロジェクトならば、企業独自の戦略で進めていけばいいのですが、外部の評価を受けながら、オープンで進める、これが企業の製品開発と全く違うところです。


 最初にここで言われたのが、「根本から立ち返ってやれ」という話でした。もちろん文科省が出してきた、たたき台のような計画もありました。しかしそれを全部白紙に戻して「とにかく世界最速、『10ペタ(1京)FLOPS』(の計算能力があるスパコン)を作れ」という話だったのです。のっけから、かなり苦労しました。


―10ペタは、かなりのハードルだったのではないでしょうか。


渡辺氏:当時(2006年)の1番速いスパコンでも100テラFLOPSくらいでしたから。また、半導体などは1年か2年で技術革新がありますから、3~4年程度を見越して計画を作らなければなりません。他にも、どんなスパコンが求められているのかということを、スパコンのユーザとなる大学のセンターや国の研究所などに話を聞いてまわっていました。


 普通ならば、Intelのチップを持ってきて組み立てればいいのです。中国のスパコンはそうした既存のものを買ってきて組み立てています。しかし、計算速度の鍵になるのはチップです。これをゼロから、また数年先を見越して作っていくというのはなかなか大変でした。


 最初はNEC、日立、富士通の3社でやっていましたが、途中でNECが撤退、一緒に取り組んでいた日立も撤退しました。ですから、システム構成を富士通担当部分にで強化するなどして全部組み立て直したのです。その後の開発は順調に進みました。

>>プロジェクト途中の「事業仕分け」、その影響は?


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