地上デジタル放送はどこに向かうのか?
~デジタルコンテンツに立ち込める暗雲~ 
慶応大学大学院教授 岸博幸氏
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2011/6/23  1/3ページ

まもなくアナログ波は停波し、地上デジタル波だけの時代が訪れる。テレビ放送がデジタル化することにより、かねてより放送と通信の融合が始まる、と各所で言われてきた。しかし現実はネットによる著作権の侵害、テレビによるネットバッシングなど、決して良好な関係とは言えなくなっている。アナログの停波に際して、デジタルコンテンツはどう変わるのか、慶応大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸教授にお話をうかがってみた。

ネットの登場で収益が下がり続けるテレビ局

―地上デジタルテレビの話が持ち上がってから「放送と通信の融合」という言い方で、ネットとテレビの融合が表現されていますが、現状はどうなのでしょうか?

慶応大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸博幸氏
慶応大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸博幸氏

岸氏:テレビとインターネットをどう組み合わせるか、いまだにテレビ局も試行錯誤しています。きちんとしたコンテンツを制作するためには、コストがかかります。そのためのコストをどう回収するかというと、現在は著作権などの「権利」しかありません。


 しかし、それをネット側が「コンテンツは無料」だと言ってYouTubeに著作権処理されていない動画を上げるなどしているため、テレビ側は権利による収益を上げられない状態が続いています。インターネットだけでのコンテンツ展開は基本的に儲からないんですよね。日経新聞などは有料化の試みをしていますが、投資に比べたら全然回収できていませんから。


「ニコ動」モデルはテレビ局には通じない

―ネットで動画と言えば「ニコニコ動画」は、単体で黒字になっています。

岸氏:ニコニコ動画は会員収入を増やして、広告を載せて黒字にし、うまくいっている稀有な例ではあります。ネットの動画放送関係サイトで、ほかに成功している例は世界レベルでないでしょうね。YOUTUBEは動画単体では黒字になっていませんし、テレビ関係はみな権利を侵害されて、ネットでは損をしています。


 しかし、儲かっているからといって、そのやりかたをやればテレビ局も儲かると思うのは大違いです。テレビ局のようにコンテンツを作っているか、ニコニコ動画のように配信が中心か、という違いは大きいです。


 コンテンツを作るのはコストがかかるのです。ニコニコ動画は、著作権料を権利者側に払ってはいるけれども、それでテレビ局にかかっている固定費をカバーすることは到底できません。もちろんニコニコ動画は自分で生放送などもやっていて、他の動画サイトに比べればコンテンツは作っていますが、それが軸というわけではありません。テレビ局も同じような作りになったら、それはそれでどうかと思います。


―そうするとかなり厳しい状況ですね。


岸氏:手詰まりに近いですね。ほかの新聞や音楽といったコンテンツもみんな同じですから。それが現実です。「ネットはバラ色」と言う人はいますけれども、それはユーザ側の視点であってコンテンツ制作側の話じゃないですよね。


 ネット上でコンテンツを作るプレイヤーが儲けるのは大変です。ネットは広告を入れても、会員を募集しても単価が安くなる傾向にあるので、収益を上げるために現段階ではアナログ世界に行かざるを得ないのです。


 CDがネットに代替されてしまった音楽業界で言えば、ネットで代替されないコンサート、アーティストグッズやファンクラブなどで収入を増やすしかありません。翻ってテレビ局は地デジになってチャンネルが増え、それでどう儲けるのかと。広告収入は、減ることはあっても増えることはないですよね。

>>地デジ化はテレビ局に何ももたらさない


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