非常時におけるインフラとしてのIT~震災でも“つぶれない”ITを築くために~ 西和彦 尚美学園大学大学院教授
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2011/5/26  3/3ページ

ITの負の側面

―ITが活用される一方で、デマなどのチェーンメールも広がりました。ITの負の側面に関して、お聞かせ下さい。

西氏:やはり全ての技術は、プラスの面とマイナスの面があるものです。例えば車のマイナスは排気ガスです。しかし、排気ガスがある反面、車は便利でもあるわけです。


便利なものには必ず「闇」がある。ITも例外ではない。それをいかに教育するかが重要だ
便利なものには必ず「闇」がある。
ITも例外ではない。 それをいかに教育するかが重要だ

 負の面があれば、その対策をしっかりしていく必要があります。そうしなければ、思いもしないようなマイナスな面が生じてしまう。例えば電子マネーの負の面は「重さにお金を感じないこと」です。カジノに行って1億円かける人はいません。とてつもない重さだと誰でもわかるからです。しかし電子マネーですと、ゼロを数回たたくだけで良い。お金の重さが感じられずに、その行為が場合によっては恐ろしい結果を生むことになります。


 便利なものには必ず「闇」があります。その「闇」の部分に関しては、教育することで、「闇」として使われることを止める必要があります。


―なるほど。今回、企業が事業を継続していくうえで、在宅勤務も注目されました。そのあたりについてはいかがでしょうか?


西氏:在宅勤務も「闇」の面があります。それは会社に対する帰属意識がなくなり、愛社精神がなくなるということです。在宅勤務をするのであれば、週に1日では短すぎる。最低週に2日、会社に出勤させて、仕事をさせなければならない。そうしなければ愛社精神がなくなり、ひいては会社の事業そのものに影響が出てしまうのではないのでしょうか。


 ですから、インターネットインフラが普及しているからといって、非常時でも在宅勤務を多用するのは極めて危険です。そのあたりがITを活用していくうえで非常に難しいところです。


―また、省電力でも活用できるものが注目されるようになりました。


西氏:これからは様々な家電製品に電力センサーを付け、インターネットに繋がるようになります。ピーク時には「止めてください」と警告をならす電気製品が必ず普及するでしょう。


 そして「電力の重要と供給の関係」が見直される中で新しい方法が出てくると思います。その最たるものが次世代パワーグリッド(電力網)です。インターネットで情報系と電力を連動させ省電力化をはかろう、ITによるデジタル制御により、電力網という巨大なシステムを管理しようという方法です。


非常時におけるITのこれから


―それでは今後、非常時にITが担う役割、展望をお聞かせください。

西氏:今回の経験で“つぶれない”IT、“つぶれない”コミュニケーションの基盤となる「インターネット」を見直す事が大切です。非常時でも繋がる携帯電話、繋がるメール、不在者情報などが必要不可欠です。また大きな地震が起きるときに備えて、“つぶれない”強固なシステムをつくる―これはエンジニアにとって大きなテーマだと思います。


 例えば、電話の通話制限も非常時に考えなければならない手段の1つです。1人3分ぐらいで話をするといった具合に、様々な知恵を生かせばいい。それを反映した機能を導入することはさほど難しくありません。今後問われていくことは、今回の地震を経験して何を学ぶかという、我々の学習態度だと思います。

(山下雄太郎)
西和彦氏

【西和彦氏 プロフィール】にし かずひこ
1956年生まれ。尚美学園大学大学院教授、須磨学園・学園長。
1977年、早稲田大学理工学部在学中にアスキー出版(現アスキー)を設立。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏(現会長)と出会い同社と提携する。その後1979年、アスキーマイクロソフトの極東担当副社長に就任。1980年に同社取締役新技術担当副社長に就任し、日本におけるPCの普及に尽力する。1999年に工学院大学大学院で情報学博士号を取得。2007年3月、ハイエンドオーディオの企画・開発会社、株式会社デジタルドメインを設立。 
 
主な著作は
『インターネット5つの預言』(ダイヤモンド社)
『ITの未来を読む365冊+α』(日経BP社)
『ビル・ゲイツ 未来を語る』(訳、アスキー)など多数

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