非常時におけるインフラとしてのIT~震災でも“つぶれない”ITを築くために~ 西和彦 尚美学園大学大学院教授
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2011/5/26  2/3ページ

非常時に必要なものとそうでないもの

―ここまでの震災がなければ見えてこなかったものなのでしょうか?

西氏:それは我々の想定が甘かったということでしょう。例えばラジオなどは今回の震災でメディアとしてかなり機能しました。


 これでデジタルラジオの開始は10年か20年延びたのではないでしょうか。もともとデジタルラジオはアナログラジオに比べてノイズが少なく質の高い音声放送や、番組に関連した文字情報を映した動画放送を携帯電話などに配信するといったものです。


 しかし、今回の震災でアナログのラジオをデジタルに変えるという発想に違和感を覚えました。ラジオはとりあえずずっとアナログでいいと私は思います。


 そして今回の震災用のWebページで一番評価するべきはGoogleでしょう。普通なら1年も2年もかかるようなシステム復旧・開発を非常に早く対応していました。


―今回の状況では、被災地を中心にTwitterが非常に役に立ちましたが、その点はどのような印象をお持ちですか?


西氏:役に立ったということはわかりますが、Twitterで発信する人は一部の人にとどまっています。


 私はTwitterをソフトバンクのように企業内のコミュニケーションに使うこと自体は良いことであると考えています。しかし、もっと言えば文字だけではなくて、写真と音声で社員同士がコミュニケーションをとれる、「クローズなTwitter」のようなシステムが望ましいと思います。


 ただ、単純にTwitterを不特定多数の人に対して情報を発信することに使うのはいかがなものでしょうか? 孫さん(ソフトバンク・孫正義氏)も活用されていますが、Twitterで発信することに気をとられると、非常時においても、真剣に向き合わなければならないほかのことがおろそかになりかねないという危険性があります。


―またインターネットを通じた動画も脚光をあびました。


西氏:そうですね。しかしまだ、携帯電話でニコニコ動画を見る人は少ないと思います。メディアとして、認知されつつありますが…。


 インターネットなどのITインフラはエジプトなど中東では独裁者が握って、情報を遮断するほど重要な位置を占めるようになっていました。

図、日本のインターネット利用者及び人口普及率の推移・個人(出典:総務省・平成22年度情報通信白書)
図、日本のインターネット利用者及び人口普及率の推移・個人
(出典:総務省・平成22年度情報通信白書)

 もともと情報が発信者から受信者に一方的に伝わる「放送」は古今東西、国の実権を握る為政者も好むほど重要な伝達手段でした。インターネットで配信する「動画」も「放送」と同じことです。インターネットというのは「通信」という意味で考えている人がまだ多いですが、例えばYouTubeにしてもインターネットの「動画」は一種の「放送」であるわけです。放送と同じ事ができるのですから、世の中に影響を与える手段に十分なり得るし、今回の震災時でもなり得たわけです。

>>ITの負の側面や非常時における理想のITとは?

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