2011年2月に中央の在庫がなくなり、ほぼ枯渇の状態といえるIPv4アドレス。次世代のIPバージョンであるIPv6への対応が、ISP(インターネットサービスプロバイダ)などに迫られている。IPv6に対応すると、インターネット世界はどのように変化していくのだろう。IPv6普及・高度化推進協議会専務理事で、東京大学大学院教授の江崎浩氏にIPv6普及の問題点、そして近未来社会の展望を伺った。
―IPv6が策定されたのは1995年です。この当時のインターネットに対する意識はどのようなものだったのでしょうか。
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| 東京大学大学院情報理工学系研究科 江崎浩教授 |
江崎氏:90年代中盤くらい、Windows95が普及しだした時に、インターネットにつながる機器がものすごい勢いで増えました。この当時、「2004年~2005年までにIPv4アドレスは枯渇する」という予測がなされていました。当時IT業界で行っていたのは、NATという1つのIPアドレスを複数のPCで共有する技術などを使って延命させ、有効にアドレスを共有することと、次世代の規格であるIPv6の標準化です。
IPv6の標準化が終わった1995年から、本格的に産業界の実装を含めた作業を進めたのです。ただ、この時のIPv4の在庫は70%以上ありましたから、企業は「やらなければいけないけれども、現実味がない」という感覚でした。また、ISPなどの事業者は、NATでの対応で済ませていました。「IPアドレスはなくなってもいい」「IPアドレスはなくならないのでは?」という意識を持つ人がほとんどでした。
―こうした事業者の意識が変わり出したのはいつごろなのでしょうか?
江崎氏:IPv4の在庫が20%を切った2008年頃、「確実になくなる」ということがわかってからです。ただ、このときでも多くの企業はIPv4アドレスを持っていましたので、「ビジネスが広がらない限りは不要」というスタンスでした。
2000年から始まった「e-Japan戦略」で、ADSLが急速に普及した時は爆発的にインターネットユーザが増えてIPv4アドレスが消費されましたが、それ以降のユーザ数は微増でしたから。
―IPv6に対応しないと何が困るのでしょうか?
江崎氏:クラウド・コンピューティングですね。クラウド・サービスはまだ出てきたところですが、この仕組みはものすごいアドレスを消費してしまう。
仮想化などの技術は、1台のサーバに1000個のバーチャルマシンを立ち上げます。クラウド・コンピューティングはインターネットスペースで結ばれて成り立っていますから、IPアドレスがそれだけ必要になります。そういった意味でクラウド・コンピューティングはIPv4の消費トリガーといえます。クラウド事業者にとっては、IPv4の枯渇はシリアスな問題です。
しかしASP(アプリケーションサービスプロバイダ)事業者はなかなか対応しません。というのは、彼らにとってはアプリケーションのシステムダウンが一番怖いのです。システムが動かなくなれば顧客が逃げてしまいますから、安全に運用していこうとする。客から文句が来ないようにするためにIPv4にしがみついている、という状態です。
顧客へのサービスという面ではやっていませんが、各企業の研究所レベルではIPv6対策を練っています。ただ、一般的にすべてのデータセンターやクラウド事業者がやっているというわけではありません。米国の大手クラウド事業者のなかには全然IPv6対応を行っていないところもあります。IPv4アドレスを大量に保有している米国に本社があり、なんとなく心理的にIPv4アドレスがある、というイメージを持っているのでしょう。


