月島食道楽:牛もつ げんき

牛もつ、牛フワ、牛ナンコツ、煮とうふ、煮玉子が入ったバージョン(\550)

第25回「牛もつ げんき」

月島らしさを体現する下町の“憩いの場”
2013/4/1

 月島・佃でもんじゃ以外のお店を紹介する「月島食道楽」。第25回目は月島特有のあたたかい雰囲気をもち、いつまでもそこに居たくなる下町の“憩いの場”牛もつ げんきを紹介する。


 夕方、もんじゃストリートの参番街・相田書店を過ぎてすぐの路地裏を入ると、何やらわいわい盛り上がる声が聞こえてくる。黄色い屋根にビニールのカーテンに、「牛もつ」の赤提灯、気軽に座れる横長の椅子…。路地裏にある“憩いの場”「牛もつ げんき」がそこにはある。


 メニューを見ると、「牛もつ120円」「牛フワ120円」「牛ナンコツ120円」とたいへん良心的なお値段。「国産の牛もつにこだわって出しているので、牛もつだけだと赤字だよ」と女将の大矢つる子さん。生粋の月島っ子が切り盛りするお店は、いまでは貴重な、ビールなど飲み物の持ち込みができる店だ。

生粋の月島っ子、女将の大矢さんがつくる料理にはどこか懐かしい味をおぼえる
生粋の月島っ子、女将の大矢さんがつくる料理にはどこか懐かしい味をおぼえる

 早速頼んでみると、じっくり煮込んだ牛もつがつゆにしみこみ、牛もつ本来の旨みを最大限に引き出している。一口食せば、そのぷるぷるとした柔らかさに思わず舌鼓を打つ。つゆもコラーゲンが溶け、そのまま飲める。これで本当に1本120円? と目を疑いたくなるほどだ。また、牛の肺である牛フワのふわりとした歯ごたえは病み付きになりそう。牛ナンコツのコリっとした食べごたえもくせになる味だ。これに煮とうふ、煮玉子がついたバージョン(550円)を頼むのが、「牛もつ げんき」の主要なメニューを一通り味わうコース。熱燗にして頼んだワンカップがついつい進んでしまう。


 そんななか、大矢さんを「つるちゃん」と呼ぶ、隣に座った女性の常連客から「『さんまめんたい』が美味しいから食べてみて。こんな大きいものを300円で出す居酒屋はないよ」という声が。早速頼んでみると、程よく焼けた、ボリューム感のあるサンマが出てきた。箸を入れれば、明太子がこれでもかと入っている。ほかの常連客からも「フランス料理店のソースを使った『串カツ』も美味しい」と声がかかる。頼めば、家庭で使うソースとは明らかに違う辛みのある濃厚なソースに、厚い肉とキャベツがよくマッチしている。料理のおいしさについて話すうちに常連客ともすっかり仲良くなってしまった。

さんまめんたいはこのボリュームと
おいしさで300円   串カツは辛みのある濃厚なソースがかかり
肉・キャベツのおいしさを引き出している
さんまめんたいはこのボリュームとおいしさで300円   串カツは辛みのある濃厚なソースがかかり
肉・キャベツのおいしさを引き出している

 見ず知らずのお客と仲良く飲めるのも、この店の魅力。これもひとえに「人が好きでやっている」という大矢さんの人柄と店の雰囲気がなせる業だ。大矢さんは早朝の築地市場で仕事をした後、この店を営むというサイクルで切り盛りしてきた。そのため、店も15時半~18時半という短期営業。お目当てのお客で席がいっぱいになることがほとんどだ。


 常連客に聞くと、「お金はないけど、おなか一杯に食べたい」という学生のために、持ち込んだご飯に牛もつのつゆをかけてくれるといった粋なエピソードも。店に来る客も学生やサラリーマン、弁護士など老若男女を問わず様々。この居心地のよさはまさに「下町の“憩いの場”」と呼ぶにふさわしい。そのうち、店主の大矢さんも会話に加わり、楽しいひと時を過ごすことができた。


 月島に足を運ぶなら、路地裏にある店にもぜひ足を延ばしてほしい。月島特有の人情を感じさせる店がそこにはある。いつまでも留まっていたくなるほどの“あたたかい空気”を醸し出す「牛もつ げんき」。行けばあなたもその魅力に必ずはまる。

(山下雄太郎)
牛もつ げんき

牛もつ げんき
住所:東京都中央区月島3-8-6
電話番号:03-3531-5900
営業時間:15:30~18:30
定休日:日・祝