
ランチ限定の北海丼(お椀、小鉢付\1200)。この日はブリ、シャケ、ホタテ、カニ、イクラ、甘エビ、ホッキ貝が乗っていた
第21回「如月」
“魚を存分に楽しめる”大将の心遣い
「○○離れ」とは最近よく聞く言葉だが、その中に「魚離れ」という言葉もある。
海に囲まれた国土を持つ日本において「魚」は食文化の大きな位置を占める重要な存在だ。そんな日本においても「魚」離れは謳われる。
曰く、ほかの動物性たんぱく源に比べて後処理が大変。
曰く、調理をすると匂いが付きやすい。
しかし、魚を使う「寿司」は江戸時代以来のファストフード。気軽に食べられてこそ、華。今回紹介するのは、月島に寿司屋を開いて10年。職人気質の大将が握る「如月(きさらぎ)」にお邪魔した。
「ウチを取材するよりも築地で値段見ながら、温暖化の影響を調べた方が面白いよ」
のっけから重い話題。如月では、大将・山田倫生さんがこだわり抜いたその日に「美味しい」素材をお客さんの好みやTPOに合わせて握ってくれる。もちろん魚で美味しいと言えば「季節物」というのが相場だが…。
「もう11月だって言うのに、9月には終わるはずの脂の乗ったカツオがまだある」
それが温暖化の影響ですか? それだけ聞けばカツオ好きの私としては、うれしい限りですが…。ところが、もう少し聞いてみると、その代わりに秋口に食べごろの牡蠣は栄養がいかなくて値段が高騰してしまうとか。牡蠣も好きな私としては、それも困ります…。
「マスコミがもっと、そういうことを調べて、取り上げてくれなくちゃ」
け…検討しておきます。そろそろ本題に戻すと、月島・佃は築地が近いせいか、密かに寿司屋の激戦区。1人前3万円もする高級寿司から、スーパーに並ぶ充実の寿司コーナーまでの幅広さ。実はこの界隈で、もんじゃ焼きのお店の次に多いのが寿司屋だとか。で、その激戦区で大将の店が支持されているのってどういうところなんでしょう?
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| 客の好みに合わせたものを作るのが人気の秘密 |
「ウチはお客さんの好みに合わせて魚料理を作るんだよ。好みのものなら寿司じゃないこともよくあるよ。常連さんで、2年ほど経って初めてウチの寿司を食べたなんて方もいるしね」
2年も…。寿司以外の料理も充実させて、形式にとらわれず純粋にお客さんが“魚”を楽しめるようにしたことが、人気の理由みたいだ。なるほどとうなずく私に、大将は温暖化から広がる様々な話をしながらも、テキパキと作った「北海丼」を出してきた。待っていましたとばかりに箸を割ると、大将が聞いてくる。
「ちらしってどうやって食べる?」
え…。ちらしに食べ方が…? 実は、この直前に食べた“握り”も正しい食べ方をレクチャーされたばかり。私が「醤油を適量垂らして食べていますが…」と恐る恐る言うと、大将は破顔した。
「ちらしは豪快に食べて良いんだよ。皿にワサビ醤油を作って、上からかけて、掻きこむように食べる」
言われたとおりにして掻きこんだ。うん、おいしい! 新鮮な魚はもちろん、ワサビの香りやガリ、シャリそしてその調和。掻きこむことが想定されているのだろう絶妙なバランスに、取材を忘れて夢中に平らげてしまった。
「温暖化のせいで魚が獲れる場所や季節がどんどん変わってくるし、世界的にも魚食が広まっていくから、これまで食べていた魚は値段が上がる一方。お客さんに同じ値段で出したいけど、いつまで出せるか…」
大将の顔が少し曇る。魚を大量に消費する日本人としては深刻な問題だ。それでも、こんな風に魚が美味しく食べられるお店は「魚離れ」と呼ばれる現代だからこそ、末永く続いてほしい。
如月
住所:東京都中央区月島3-10-2柴田ビル1F
電話番号:03-5560-0990
営業時間:11:30~13:30 17:00~23:00
定休日:日
