月島食道楽:佃煮特集

佃名物・佃煮。店独自に味を守り続け、それぞれが持つ伝統を大切にして個性を出している。

第15回「佃煮特集」

江戸時代からつづく伝統の味 店によって味の個性も様々
2012/4/23

 佃島・隅田川のほとりに江戸時代より「佃煮」をつくる店がたたずむ…。月島・佃でもんじゃ以外のお店を紹介する「月島食道楽」。第15回は佃煮特集。“佃煮ストリート”を形成している佃煮屋さんを紹介する。

“佃煮ストリート”のある佃島・隅田川ほとり。
真ん中右に「天安」「佃源 田中屋」の看板が見える
“佃煮ストリート”のある佃島・隅田川ほとり。
真ん中右に「天安」「佃源 田中屋」の看板が見える

 徳川家康が江戸幕府を開いたとき、摂津国佃村(現大阪市西淀川区佃町)の漁民を江戸に呼び、石川島に近い砂洲を居住地として与えた。漁民らは砂洲を埋め立て「島」にすると故郷の佃村にちなんで「佃島」と名付ける。彼らは特権的な漁業権を与えられ、その代わりとして高級魚である白魚などの漁をして、江戸城内の“台所”をまかなった。そして漁で余った小魚類を、自らが食べるための保存食として塩辛く煮込んでつくったものが佃煮の発祥 と言われている。


「天安」のたらこ、昆布、うなぎ
「天安」のたらこ、昆布、うなぎ
 

 「今でも3月1日に徳川家に献上しています」と語るのは、江戸時代・天保8年(1837年)に創業し、初代安吉氏が開店した佃煮の元祖「天安」。人気は昆布の佃煮。食べてみると、口の中に広がる適度な塩加減が、昆布のまろやかさと甘味を引き立てる。「特に火加減を大切にして変わらない味をモットーにしています」と店の人はそのころから受け継がれる味のポイントを説明する。東京オリンピックの頃は佃の渡しで隅田川の向こう岸まで佃煮を売りに行っていたという。 


 佃煮は保存食であり、保存料などの薬品を使わずに長持ちする食べ物として好評を得ている。その“長持ちし、かつ昔から変わらない味”を維持するためにも味の伝承は一番気をつけなければならないこと。前出の火加減のほか、素材を扱う問屋や、素材が獲れる場所にも気を使う。取材したこの日も八丁堀から来て買う昔ながらのお客さんがいた。やはり昔ながらの味は常連客にも納得の味のようだ。


「丸久」のしらす、あさり、えび
「丸久」のしらす、あさり、えび

 奥に行くと見えてくる「安政」の元号の垂れ幕。この垂れ幕の店「丸久」は元々佃の漁師の発祥で明治から小売業に転じた店だ。当時の味付けを尋ねると、「まさに“辛い”の一言」と店主の小林健児さん。さすがに今の味は当時ほど辛くはないが「お客さんのなかには『甘くしてほしい』という意見もあるが、甘くするとうちの持ち味がなくなってしまう」として江戸前の味の名残を維持しているという。


 よく出る種類は、しらす、あさり。なるほど、塩味は強めだが、それでも素材の持ち味をしっかりと生かす味付けは絶妙であり、さすがの伝統を感じさせる。「お問い合わせはありますが、インターネット通販はしていません。生き物を扱う性質上、必ず納得できる原材料を揃えられるわけではないので、味の質を維持する以上、難しいのです」とやはり味の堅持を信条する様は「職人気質」のこだわりを感じる。


「佃源 田中屋」のあさり、昆布、しらす
「佃源 田中屋」のあさり、昆布、しらす

 最後に“佃煮ストリート”の手前にある「佃源 田中屋」に足を運ぶ。こちらの店も江戸時代後期に店を出すなど歴史がある。店の売りは昆布としらす、あさり、かつおの角煮。地元の佃小学校も、授業の一環で来るそうで、確かに甘みが若干前に出ており、子供に特に好まれる味という印象だ。聞けば、昆布は北海道から取り寄せるなど、こちらも素材を調達する場所に気を使っているという。「佃煮発祥の地としての誇りと伝統を絶やさないようにしていきたい」と話す。


 今回取材した3軒の佃煮はどの店も江戸時代から佃煮の発祥として、店独自に味を守り続け、それぞれが持つ伝統と持ち味を生かして個性を出している。佃といえば佃煮…。この佃島を訪れるならやはり味を食べ比べてみてほしい。

(山下雄太郎)

天安
住所:東京都中央区佃1-3-14
電話番号:03-3531-3457

丸久

丸久
住所:東京都中央区佃1-3-10
電話番号:03-3531-4823

佃源 田中屋

佃源 田中屋
住所:東京都中央区佃1-3-13
電話番号:03-3531-2649