特集 近づくマイナンバーの足音 「1年後」と「3年後」への準備・検討状況

2015/1/8  3/3ページ

三鷹市 デジタルディバイドに配慮を


 三鷹市の清原慶子市長は、前述した政府におけるIT総合戦略本部で番号制度の利用範囲拡大等を検討している専門調査会の分科会などで構成員を務めている。また、学校教育へのICT導入などICTの活用に熱心な市長だ。


 三鷹市は2014年10月に、清原市長を本部長とする番号制度推進本部を設置し、マイナンバー制度の施行準備に対応している。前述したが、住民基本台帳カード(住基カード)の交付率が5.2%と全国的に低い中で、三鷹市の普及率は「13%弱で、都内では2位」(三鷹市番号制度推進本部事務局主任 木村祐介氏)。三鷹市では、住基カードのほかに印鑑登録カードなども発行しているが、これらの機能を個人番号カードに統合する際のコスト等を懸念しているという。三鷹市の住基カードの普及は「無料交付キャンペーン」を行ったことなどにより進んだため、マイナンバー制度でも「無料で交付しないと住民も個人番号カードを欲しがらないのではないか」との思いがある。


 マイナンバー制度は「税」「社会保障」「災害対策」に関する事務のほか、これらに「類する事務」も各自治体が条例で定めればマイナンバーを活用することができる。このことについて三鷹市は、「添付文書をできるだけ削減し、情報連携を強化することにより、ワンストップで申請手続きを完結できるようにする」との方針の下で検討を進めている。


 木村氏は、今後の民間へのマイナンバーの利用範囲拡大について、「国民の利便性を向上するという点では正しいが、情報漏洩などのリスクも高まるので、セキュリティ・防止対策を徹底した上で整備してほしい」と求めた。さらに、自宅にいながら個人番号カードでオンライン手続きを行う際にはカードリーダーが必要になるが、「それがお年寄りにまで広まるのか、実際に活用されるのか懸念されている」と指摘。「カードの普及だけを目的にしてしまうのはまずい」とし、「デジタルディバイド」についても配慮する必要性を強調した。


政府のマイナンバー制度啓発用ポスター
政府のマイナンバー制度啓発用
ポスター

 政府は制度周知の広報について、自治体に対して住民の目に触れやすい場所に広報ポスターを掲示することや、広報誌・ホームページでの情報提供、説明会の開催など「国の広報への協力」を求めている。政府はポスターについて、9月下旬に啓発ポスターを公表し、「1市町村あたり10~15枚程度を配布」するとの方針を示していたが、その啓発ポスターは11月下旬になっても三鷹市には届いてはいなかった。


混乱回避へ周知徹底を


 マイナンバーは「住民票を有する全員に付番」(政府)されるので、制度の対象者は約1億2000万人に上る。さらに、マイナンバーの付番・通知と同時期に通知が予定されている「法人番号」の対象も300万社以上に上るため、制度が混乱なく円滑に施行されるには当然、丁寧な周知が必要になる。


 マイナンバー制度のような大規模な制度改正で過去に、大きな混乱が生じた例がある。近年で混乱が生じた例として挙げられるのが「後期高齢者医療制度」だ。同制度は、医療費の適正化を目的に、75歳以上の国民を対象にして2008年4月1日にスタートした。当時、「国としては『広報はしっかり行った』」としていたが、いざ制度が始まると制度を知らない住民からの問い合わせが殺到し、電話がパンクしてしまう自治体もあった。今回の取材でも三鷹市の担当者は、国民が混乱することなく制度が施行されるため、「国が国民に対してしっかりとした制度周知」を行う必要性を強調していた。


 また、過去に国内で導入が検討された番号制度では、法案が可決された後に、プライバシー保護などの観点から反対運動が起こり、廃案になったものもある。個人情報保護については今回の制度では、プライバシー保護対策を推進するための「特定個人情報保護評価」の実施が各自治体に義務付けることなどで対応するとされている。しかし、それのみならず「国民の8割以上が個人IDカードを持っている」など先進国のようにマイナンバー制度が展開されるには、政府や制度そのものを国民が信頼することが不可欠だ。


 国民への周知不足については政府も、マイナンバー制度の説明会で、「まだ周知が足りていない」と公言しており、マイナンバーの付番・通知まで1年を切るタイミングとなった2014年10月に、制度への問い合わせに対応するコールセンターを開設した。


 制度の準備に当たっては、2014年の政府予算案に約1000億円が計上され、時間も人員も多く割かれている。懸念事項はありながらも、国策として法律で実施が決められている以上は、これらのコストが壮大なムダなものとならないよう取り組むべきだ。低い交付率にとどまった住基カードと同じ轍を踏まないかどうかなど国の手腕・リーダーシップが問われる。

(高橋 慧)

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