特集 近づくマイナンバーの足音 「1年後」と「3年後」への準備・検討状況

2015/1/8  2/3ページ

戸籍やパスポート業務で利用も


 マイナンバーの利用範囲拡大については、政府の「高度情報通信ネットワーク社会推進連略本部(IT総合戦略本部)」に置かれた専門調査会の分科会で検討が行われている。同分科会が2014年5月にまとめた中間報告は、「公共性が高く、情報連携等により更なるメリットが期待される事務」を対象に利用範囲の拡大を検討する必要性を強調。具体的な事務として、戸籍や旅券(パスポート)、預貯金、医療・介護・健康情報の管理・連携、自動車登録の事務などを挙げている。


 分科会は、中間報告公表後の初会合となった2014年11月の会議で各所管省庁等による検討状況を報告した。それによると、戸籍事務については法務省が研究会を設置し、2016年2月以降に法制審議会に諮問することを目指して個別論点の具体的検討を進める方針だ。パスポート事務については、戸籍事務でのマイナンバー活用などにより申請時に戸籍謄(抄)本を提出する必要がなくなるとし、外務省を中心に検討を進める考えが示された。

マイナンバー制度の利用範囲拡大に向けたロードマップ(政府資料を基に作成)
マイナンバー制度の利用範囲拡大に向けたロードマップ(政府資料を基に作成)

 医療機関や電気・ガス・水道などのライフライン、引っ越しの際に生じる事務の効率化などマイナンバーの利用範囲拡大がもたらす影響は大きい。そのような「利用範囲拡大の可能性」について、民間の調査機関である株式会社矢野経済研究所が2014年10月に調査結果を公表した。同研究所は様々な調査報告書を発表しているが、マイナンバーについて調査を行ったのは今回が初めて。


利用拡大は「社会インフラとして定着」が前提


 調査では2014年6月から9月にかけて、業界団体や公的機関など関係者へのヒアリングやITベンダーを対象にした面談・アンケート、文献調査などを実施した。その結果、将来的な利用範囲の拡大は、「公共性の高さ」や「国民がメリットを享受できる」「個人番号カード、マイ・ポータルの普及」がキーワードになると分析。併せて、国民目線に立った利用メリットの検討と個人カード・マイポータルの早期普及により「マイナンバーが社会インフラとして定着することが前提」との考えも示した。なお、マイ・ポータルは、行政機関がマイナンバーの付いた情報を使用した履歴などが確認できるサイトで、2017年1月からの利用が予定されている。


 利用範囲拡大の展望については、短期的には、政府方針による個人番号カードの利用拡大や先進的な自治体による住民サービス拡大の取り組みが進むと予測した。一方、長期的には、医療や金融など「国民の生命や財産を守る目的での活用拡大はメリットを実感しやすい」と分析。具体的な業務として、医療・福祉分野では、「薬の処方情報との連携」「統計データとしての医療情報の活用」「マイ・ポータルの活用などによる予防医療や健康管理」などを挙げた。


 さらに、個人番号カードに搭載されるICチップは「本人確認などに活用できる可能性がある」と指摘。今後の法改正によって民間企業による個人番号カードの電子証明書利用が可能になれば、金融機関の口座をオンラインで開設することや医療機関の本人確認、健康保険加入の資格確認等の実現につながり「国民の利便性が高まる」との考えを示した。


 また、調査報告書では海外の先進事例としてデンマークとエストニア、スウェーデンが紹介されている。調査を担当した矢野経済研究所上席研究員の小林明子氏によると、この3国は番号制度の活用が「民間利用も含め注目される」。例えばエストニアでは、「国民の8割以上が国民IDカードを持っている」という。民間利用については、取り組みが盛んな国がある一方で「日本のスタート時のように(民間利用を)禁止や制限をしている国もあるので、濃淡はある」と説明した。


 マイナンバー制度と同じく「利便性の向上、行政事務の効率化に役立つもの」(総務省)として政府が取り組んだものに「住民基本台帳カード(住基カード)」がある。住基カードと個人番号カードはよく比較されるが、住基カードの普及率は約5.2%(2014年3月時点)と低調で、利便性向上などで十分な効果を発揮しているとは言えない数値だ。


 住基カードの発行業務等に取り組み、現在は混乱なくマイナンバー制度を運用することを目指して様々な関連業務を担っている自治体の対応はどうなっているのだろうか。

>>制度開始に向けた三鷹市の準備状況は?

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