特集 どこまでつながる?
M2Mの未来
加速するビッグデータの活用

2014/9/4  3/3ページ

M2Mの向こうにある「ビッグデータの活用」


 企業や政府などによる活用がいよいよ本腰になってきたM2M。しかし、東京大学先端科学技術研究センター特任教授の稲田修一氏は、日本におけるM2M普及の動きは国際的にみると決して早いわけではなく、欧州の方がむしろ普及の動きが早いという見解だ。


 この日本の普及のスピードが欧州の後塵を拝している原因については「経営者の決断力の問題」と稲田氏は指摘する。

東京大学先端科学技術研究センター特任教授 
稲田修一氏
東京大学先端科学技術研究センター特任教授  稲田修一氏

 もともと日本はセンサー技術で定評がある。さらに近年は「ビッグデータの活用」が大きくフォーカスされるという流れがある。しかし「日本の企業は技術力があるが、M2Mを取り入れることで、経営が改善されるという発想にいかないというのが現状」と稲田氏は説明する。現場レベルでM2Mによる効果を理解し、導入を求める声は上がっているという。しかし、中間管理職のレベルで明確なコスト削減効果が計算できないとして、導入に二の足を踏むという企業が多いという。


 こうしたなか、今後必要となるキーワードは「協業」だ。エレクトロニクス会の巨人・GEが2012年11月に発表した「インダストリアル・インターネット」ビジョン。医療機器、発電機器、輸送機器など様々な産業機械がインターネットに接続されることで得られる稼働データの活用により、運輸・エネルギーなどの分野で生産性改善の波が起きるとしている。この狙いから、GMは2014年1月にコマツと合弁会社を設立。ICT活用の次世代鉱山機器を開発するなどの展開を見せている。


 顧客が抱える課題やニーズを掘り出すために、センシングで必要なデータを収集・分析し、新たな価値の創造(=イノベーション)を生み出す――こうしたことが企業同士の「協業」によって、増えるようになるという。


 使うデータによっては、製品やサービスの改善、正確なマーケティングを目的とするものから、社会変革をおこすほどのイノベーションまで可能となるわけだ。


 集積するデータから抽出した情報の有用性を認識するまで、時間がかかる難しさはある。しかしそこを一歩乗り越えれば、コマツが建機による情報集積により各国のマーケット動向を把握したようなイノベーションも期待できる。「早期に」「大量の」データを集めることで、そこから知識の集積に成功したものが一人勝ちする可能性もありうる。そのためデータの集積はスピードや規模が重要になる。「早く取り組まないとライバルが成功したときには手遅れになる」(稲田氏)というわけだ。


 将来的にはM2Mを利用してデータを収集・分析・活用することが企業に変革をもたらすのはむしろ当然としてみられ、より迅速な経営判断が今後は行われるようになるはずとしている。


M2M活用に向けた今後の展開


 「今後M2Mの普及が進む分野は健康管理」と稲田氏は指摘する。「ヘルスケアの分野は人間にとって価値が高いため、健康寿命をのばすための研究が進んでいくはず」(稲田氏)。また、スマートメーターのようなスマートグリッドに利用される関連製品にもM2Mの通信技術が応用されることで、最適な需要予測に役立てる流れが進むことになるという。


 一方、日本におけるM2Mの普及の今後はどうか。稲田氏は標準化やICT政策をどれだけ組織的に行うことができるかがカギになるという。世界の競争に勝つためには政策として推進することが必要不可欠だからだ。


 「企業ではまず、M2Mでどういうことができるのかを実証し、失敗を恐れないチャレンジできる風土をつくるべき」(稲田氏)。そして政府においても総務省、経産省の若手が主体となって、チャレンジ型の施策を行うことで、M2Mの普及を進展させるべきとしている。


 企業や官公庁をはじめ普及が進むM2M。しかしその先にはビッグデータを活用し、社会インフラや経営を改革するという名目がある。人を介在せずにモノとモノがつながることで、身の周りで次々と起きるイノベーションに、今後も期待せずにはいられない。

(山下雄太郎)

注釈

*1:ヒヤリハット
大きな事故にはならないものの、事故に直結してもおかしくない「ヒヤっとした」「ハッとした」体験のこと。

*2:KOMTRAX
当時は「テレマネジメントシステム」と称しており、位置とサービスメータ、稼働マップのみの情報だった。

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