特集 どこまでつながる?M2Mの未来
加速するビッグデータの活用

2014/9/4  2/3ページ

総務省が進める研究開発


 市場が伸び、普及が進むM2Mだが、課題もある。爆発的に増えるM2M対応の機器(M2Mデバイス)の管理・制御だ。2020年にはM2Mデバイスが120億~140億台にも上るという予測もある。そのため、従来型の管理・制御方法では、通信の集中で、ネットワークが破たんするおそれがあるという。


 そのため、総務省はこの“M2M時代”の到来にむけて通信規格の開発・実証を進めてきた。この施策は、M2Mの特性を考慮して、ネットワークに対する負荷を軽減し、10倍のM2Mデバイスにも耐えられることを目指すものだ


 例えば、モバイルネットワークにつながるM2Mデバイスの移動の有無や位置の変化の推測により、位置情報の管理に必要な信号処理の負荷を減らす研究開発。ほかにも多数のデバイスからの高頻度な接続処理を避けるために、デバイスの特性に応じて接続・切断の回数やタイミングを制御する研究開発。


 「これらの成果を結集することにより、人が操作する携帯電話など比較して、所期の目標を大きく上回る26倍ものM2Mデバイスを、モバイルネットワークに収容する技術を確立した」(中谷氏)と鼻息が荒い。


 国際標準を狙う動きも活発だ。2012年7月にはM2M分野の標準化を推進する枠組みである「oneM2M」が、ARIB(電波産業会)やTTC(情報通信技術委員会)を含む世界7標準化団体により発足している。現在、2014年8月に向けてoneM2Mとして初の国際標準を策定する準備を進めている段階(取材時点)。総務省プロジェクトの受託者が主導的な役割を果たしながら、日本からのM2Mに関する提案も反映される見通しだという。


 さらに、携帯電話の標準仕様の検討を行う「3GPP」でも、日本は規格案への反映や検討項目の新設に成功しているという。「たしかにoneM2Mの動きは活発で成果が上がりつつあるが、加えてモバイルネットワークへの実装には、3GPPへの働きかけが極めて重要」と中谷氏は指摘する。


インフラの維持・管理にもM2M


 このM2Mは、社会インフラを維持・管理するシステムとしても大きな期待が寄せられている。総務省が今年度開始した研究開発プロジェクトでは、橋梁にセンサーを取り付け、リアルタイムに橋の状態を監視するICT基盤の確立を推進している。


 2014年7月1日には、橋(国内約70万橋)やトンネル(約1万本)などのインフラに関しては、目視・打音などによって5年に1回点検を行うことが国土交通省令で定められている。しかしその点検の直後に重大事故が起きるかもしれない。また橋が壊れてから建て替えるとなると、大規模な工事が必要となる。


 そこで総務省では橋梁のひずみや振動を計測するセンサーによって、常時、橋を遠隔監視することで、事後的な対処ではなく「予防保全」を基本とする維持管理を実現したいとしている。損傷につながる異常を予兆として検知できれば、現場の作業も軽減する。何より橋の利用者にとって安全というわけだ。


 データを計測するためのセンサーも、親機(読み取り機)から半径5~10mの範囲に30個程度の設置し、高密度・高頻度でデータを収集する「局所集中型」による監視の他、振動をマクロに捉える「広範囲型」での監視も行っていく。後者は、トラックなどが通った時の振動により、不具合を検知するほか、地震発生時などには迅速にデータの収集・伝送を行おうというもの。


 橋梁の劣化は非常に緩やかに進行するため、長時間・安定的にデータを収集・伝送することが重要であるという。「高信頼性と低コストとの両立が不可欠。そのため異常時の対応技術のほか、従来と比べた消費電力が1000分の1以下の超低消費電力通信技術を開発し、5年ごとの定期点検以外には電池交換無しで動作するシステムを実現する」という。また、「標準化活動等の国際場裡においても、サービス指向が重視されている中、システムから逆算した本施策は、正に時宜に適ったもの」と中谷氏は胸を張る。

橋梁におけるセンサーの設置
出典:総務省(クリックすると拡大します)
橋梁におけるセンサーの設置
出典:総務省(クリックすると拡大します)

 日本の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備が進められてきた。そのインフラが今後10年~20年で、建設から40年~50年経年し、更改時期を迎える。来るときに備え、今回紹介した例のようにM2Mを利用したセンサーを設置できれば、安心と安全を手にすることができるはず。橋梁に限らず、社会インフラの安全・適切な維持管理に、M2Mを役立てようとする取り組みは今後も増えそうだ。

>>M2Mの展開の先にあるビッグデータの活用とは?

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