特集 記録メディアの歴史・分類
発生、現在、これからの技術
光磁気ディスクの歴史
PC黎明期に外部メディアとして活躍したFD。90年代に入ると、1本のソフトウェアの容量が増大した結果、必要なFDの枚数が10枚を超えるプログラムも出るようになった。ドライブは1つしかないため、プログラムを動かしながら、必要に応じて、FDを抜き差しするわけだが、これではかなり不便である。まもなく光ディスクや光磁気ディスクという、大容量のメディアの登場により、こうした状況は払しょくされた。
1980年代の後半、運搬に便利なことと、耐久性の高さで使われたのがMO(Magneto-Optical Disk)だ。光磁気ディスクと呼ばれ、高温になると磁性を発揮する物質を表面に付けたディスクに、レーザー光を当てることで温度を上げ、データを読み取る。
MOの特長はディスクの形状と構造から耐久性に優れていること。ディスクをケースが覆っているためほこりや衝撃にも強く、加熱しないと磁性を帯びないため磁石にも強い。また光をあてた反射で読み取るわけではないので、後述するCDのように紫外線でデータが壊れることもない。こうした点から、長所が多いようにも思えるが、世界的には非常にマイナーなメディアであり、日本ではMacを利用するDTP業界など、限られた分野でしか利用されていなかった。
一番の理由はドライブが高価なこと、書き込みが遅いこと。同時期に出てきたCD、DVD、BDなどに比べると汎用性や互換性がないこと。MOドライブの接続にSCSI(Small Computer System Interface)を必要としたことが挙げられる。SCSIとはPCに取り付けることで、様々な機器とのインターフェイスとなる機器のこと。当時、日本のPCには標準装備としている機体も多く、これがMOの普及に一躍買った。しかし、より簡素なコネクタであるUSBが普及するとSCSI搭載のPCも減少し、合わせてMOも衰退していった。現在、国内メーカーの大半はMOの生産を終了している。
光ディスクの歴史、第1世代CDの登場
現在、メディアと言われれば想像するのが光ディスクだろう。ドライブの汎用性が高く、容量・価格比のコストパフォーマンスが非常によい。傷や、紫外線、また繰り返しの書き込みに弱いなど欠点も多いが、とにかくコストパフォーマンスの良さで普及した。25GBタイプのブルーレイディスク(Blu-ray Disc、BD)でも安価なものなら1枚40円。1GBあたりの単価が2円を切る。安価なHDDで1GBあたりは5円前後、USBメモリでは1GB100円をようやく切る程度だから、その安価さがわかるだろう。
安価なため、例えば配布する、だれかに渡す、あるいは一時的に保存するなどに向いており、現在でも光ディスクは物理的にデータを受け渡しする一般的な媒体の1つだ。また上位機種の互換が比較的容易なのも特長だ。光ディスクの最上位であるBDドライブの大半は、それよりも容量的に下位になるDVD(Digital Versatile Disc)やCD(Compact Disc)が読めることも、普及の要因の一つと言える。
光ディスクはとにかくメディアの単価が安い |
光ディスクの最も初期のメディアとなるCDは、MOよりも前の1980年代前半に、まず音楽用のメディアとして普及した。音楽業界で圧倒的に安定した音質と容量、頭出しの容易さで磁気メディアであるカセットテープを駆逐すると、90年代の半ば頃から、今度はPC向けデータ用のCD-Rとして各社がドライブ・メディアと共に生産を始める。現在では700MBのCD-Rは1枚当たり10円程度。特別に大容量でなければ、データの受け渡しには十分な容量なため、現在でも大量に流通している。
CDを始めとする光ディスクの技術の基本は同じだ。表面の透明なプラスチック円盤の内側にあるアルミニウム製の鏡面に、微細な凹凸を刻む。凹をピット、凸をランドと言い、ピットとランドにレーザー光を当てた際の差によってデジタルのデータを読み取ることができる。
CDにはいくつかの種類がある。CD-ROMは「Read Only Memory」、音楽CDやゲームソフトなどで市販されている読み取り専用のCDである。CD-Rは「Recordable」、データの消去はできないが追記が可能なタイプ。CD-RWは「ReWritable」、繰り返し書き込み、消去が可能なものだ。2000年前後で普及したDVDも同じくROM、R、RWと種類がある。
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