特集 節電? 環境対策? スマートグリッドの今 全国自治体で進む動きを追う

2014/4/17  3/3ページ

震災の復興とスマートグリッド事業


 2011年の東日本大震災は、スマートグリッド関連事業に大きな影響を及ぼしている。これまで環境技術として注目を集めていたスマートグリッドだが、震災を挟んでその節電という側面が注目されるようになってきた。


 2012年から総務省は、経済産業省の事業とは別に被災地域の整備・復興なども併せた「スマートグリッド通信インターフェイス導入事業」を進めている。実施自治体は被災地から7つの自治体が選ばれている。

総務省推進のスマートグリッド事業の概要
災害復興の目的もあるため、被災地域が中心となっている(総務省資料を元に作成)

 2013年度に採択された栃木県では、地方合同庁舎や県庁、県の施設などで「BEMS」導入による省エネの普及や、メガソーラー事業の推進を行っている。また東北地方ほどではないが、栃木県も東日本大震災の被害を受けている。その反省を踏まえて、災害に強い防災拠点用太陽光発電や蓄電池の普及なども進めている。


 個人家庭以外でのスマートグリッド導入―市役所や公共施設、企業のビルなど―では補助金を使うために、メリットをきっちり「見える化」して市民の理解を得る必要がある。自治体によっては、節電によって生み出された金銭を市民に還元する取り組みも進んでいる。


スマートグリッド普及への課題


 しかし、こうした自治体でのスマートグリッドの導入・普及にはまだ課題も多くある。スマートグリッドは電気の配送電システムに深くかかわるため、導入には自治体クラスの承認などなしに進めるのは難しい。一方でいざ、実際にスマートグリッドを促進していくには、各、個人家庭にスマートメーターを設置する必要があり、市民からの理解が求められてくる。


 「スマートグリッド通信インターフェイス導入事業」は、報告会を毎年行っている。2014年の3月20日に行われた報告会で、多くの県の担当者から出た一番の課題は「事業の理解を広めること」だった。スマートグリッドと同じ節電というカテゴライズで考えると「照明をLED化する」や「再生可能エネルギーを設置する」というような政策の場合、具体的に何を実施するか明確なため、理解を得やすい。


 ところがITによって送電を効率的に行う「スマートグリッド事業」は、具体的なイメージがわきにくい。スマートグリッドを導入することで、どうして節電ができるのか説明しづらく「メーターを設置したらその分、電気を余計に使うのではないか?」というレベルから説得が必要だったと話す。


 そもそもスマートグリッドは「都市計画」なのか「環境」なのか。導入する施設も、市役所ならば役所だが、小中学校に導入する場合は「教育委員会」が担当だ。広いインフラである分、様々な市政の境界線上を縫っていくような業務だったようで、報告会でも各自治体の担当者は「調整にも苦労した」と口々に語っていた。


 このように自治体内部ですら、理解を広めるのが難しかったという。ましてや、市民にまで理解を広げる苦労たるや想像に難くない。しかし、震災から3年が過ぎ、節電に対して疲れ、慣れ、飽きが来ている。個人個人の節約に頼るような節電は、長く続かない。


 そのためか、自治体が進めるスマートグリッドのシステムは、課題を抱えつつも着実に普及しているように感じる。節電をしなくては電力が足りないという現実があるからなのか、それとも担当者の努力の賜物なのかわからないが、今後は、暑さや寒さなどといった電力ピーク時に「無理やり我慢する」ような節電から、自然に、スマートに、節電ができるように技術が進んでいくだろう。震災対策をバネに徐々にではあるが発展を見せるスマートグリッドが、将来的には世界に誇る技術として飛躍するよう、今後の動きに期待したい。

(井上宇紀)

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