特集 スマートフォン市場の変化と現在 数字から探る移り変わり

2013/11/5  1/3ページ

日本人の2人に1人のユーザがスマートフォンを利用している。デジタルネイティブ層に限るとさらに高い割合で利用されていることを考えれば、今後スマートフォンへの移行はさらに進んでいくだろう。スマートフォン市場はどのように拡大してきたのか? 10年前から現在までの市場の動きを探ってみる。

そもそもスマートフォンとは?


 スマートフォンとは、世界的には「スマート=賢い」「フォン=電話」、つまりは多機能電話のことを指す。しかし、日本においてはフィーチャーフォン、あるいはガラケーなどと呼ばれる国産携帯電話がすでに多機能であったため、明確に線引きされるのはOSなどの仕様によることが多い。


 たいていの場合、現代ではオープンソースのOS(あるいは単純にスマートフォンOSと言われるOS)で、限りなく無数にあるアプリの追加などが自由にでき、PCに近い使い勝手を誇る電話のことをスマートフォンと呼んでいる。しかし、この定義も飽くまで最近のものであって、実際には時代によって変化している。


潜伏期:2000~05年のスマートフォン


 2000年前後の新聞記事などをひもといてみると、「高機能携帯電話」とほぼ同義でスマートフォンという言葉が使用されているものを散見できる。散見した中ではスマートフォンの機能として「インターネットができる」「カラー液晶」などを挙げている。


 つまり、2000年前後で言われていたスマートフォンとは、2001年10月にNTTドコモが商用でサービスを開始した「第3世代携帯電話」(NTTはFOMA)のことをイメージしていた節が強い。世界的には日本のフィーチャーフォンはスマートフォンと分類されてしまうことは前述の通りだが、当時は国内でもスマートフォンと同義にイメージしていたようだ。

FOMAの契約台数
2013年は9月現在の数字(NTTドコモ 企業・IR情報より数字を引用)

 第3世代の携帯電話は、2002年のサービス開始から順調にシェアを伸ばしている。販売奨励金を背景とした実質無料の携帯電話が店頭に出回っていたせいだろう。グラフからは発売してから2年経った、恐らく買い替え需要だろうタイミングで爆発的に普及が進んだことが推察できる。2012年からはLTEをはじめとする3.9世代の高速無線通信*1の普及が本格的になったためか、契約台数は徐々に低下している。


 第3世代の通信網は、もちろん現在のスマートフォンも主要な通信軸として利用しているが、この当時の携帯電話、つまりフィーチャーフォンの芽となった第3世代初期の携帯電話は、現在のスマートフォンにつながる系譜ではない。とは言え、すでにスマートフォンの種はひそかにまかれていた。通信を主軸にした個人端末「Personal Digital Assistant(PDA)」である。


 PDAは「通信もできる電話」ではなく、完全に通信に特化した個人端末だ。3G回線とカラー液晶の携帯電話が普及した日本においては重要度がさほど高くなかったが、ほぼ通話機能にのみ絞られた携帯電話を使っていた米国では、通信専門の端末として重宝されていた。


 スマートフォンの要件を「インターネットと通話ができる端末」とすれば、通話側からアプローチを進めたのが日本の端末(後のガラケー)、それ以外のPDA端末や音楽プレイヤーからアプローチしたのが世界の端末と言えるかもしれない。


 2003年頃になるとスマートフォンという言葉の意味が「PDA端末に電話機能が付いたもの」という認識に変わってきている。インターネット端末=PDAという理由だろうか、国内の携帯電話と差別化をはかるためだろうか、いずれにしても3G回線が発売される前に使われていた「インターネット+電話=スマートフォン」という点からは少しずつ、変化をしているのがわかる。

スマートフォンの主な種類(HH News & Reportsによる分類)

 米国で使われていたPDAだが、日本においても発売されていた。シャープのザウルスはPDA端末の先駆けとして2000年前後にビジネスマンに支持されており、このPDA端末に通話機能がつけばインターネットができる電話という要件を満たすことができる。実際にシャープは、2005年にW-ZERO3(キャリアはウィルコム)という、フルキーボード、ペン先の圧力を感知する「抵抗膜方式」のタッチパネル、OSはWindows Mobileという、スマートフォンを出している。Windows MobileをOSとして積み、ワード、エクセルなどが利用可能。インターネットも利用しやすく、まさに現代のスマートフォンの要件を満たした国産1号と呼べる。

>>iPhoneによる爆発的な流行とその背景


RPAツール・AIHH

【関連カテゴリ】

トレンド