特集 位置情報活用の現在地 GPSと、その先にある技術の“今の位置”

2013/8/26  2/3ページ

GPSの歴史と仕組み


 旧ソ連との冷戦時代、米国は航空機や船舶の位置の情報をリアルタイムに正確に把握する必要があった。そこで、1973年に米空軍と海軍が協力して開発に着手。こうして開発されたのが人工衛星を利用した全く新しい測位システム「GPS」だ。1989年に人工衛星の打ち上げを開始、1993年にGPSの運用開始が正式に宣言されている。


 GPSの仕組みは3つの衛星からの距離と地球の表面の位置から割り出している。例えばGPS衛星Aから信号を乗せた電波が発信し、受信機をもつOさんまでの距離を測定したとする。このとき距離は発信時間と受信時間の差に電波の速度をかけたものになる。衛星Aからの距離が40,000㎞であれば、Oさんは衛星Aを中心に半径40,000㎞の球状の表面のどこかにいることになる。


 同様に衛星Bからの距離が42,000㎞だった場合、衛星Bを中心とする半径42,000㎞の球状の表面にいることがわかる。Oさんは、衛星Aを中心とした40,000㎞の球の表面と衛星Bを中心とした42,000㎞の球表面が交わる共通した球の表面・円形の円周上に存在することを確認できる。さらに、もうひとつ衛星Cからの距離を測定することで、この円と交わる場所を求める2点に絞られる。この2点でさらに地球表面とも重なる1つの点(もう1点は宇宙などになるため除外)が、Oさんの位置となる。

GPSの仕組み(クリックすると拡大します)
GPSの仕組み(クリックすると拡大します)

 実際にはこの3つの衛星に加え、受信機(スマートフォンなど)の時刻が正確でないため、誤差を修正する第4の衛星Dの正確な時刻を利用して最終的な位置を割り出している。


GPSの普及


 こうした技術により、非常に正確な現在位置を瞬時に計測できるGPS。しかしその手軽さと精度の高さから、そのまま公開をしてしまうと、テロリストなどに悪用される心配があった。そこで衛星の技術を保持していた米国防省は、本来の目的である軍事用のものから、精度を落とすことで、民生用の利用を許可した。こうしてGPSは民生品として普及が進み、誰もが手軽に使うことできるようになった。


 GPSが爆発的に普及した背景について河口教授は「1990年代に登場したIT技術の躍進により、GPSで測定された位置情報を手軽に収集できるようになったことが大きい」と指摘する。データが簡単に通信できるようになり、容易に位置情報の取得が可能になった。さらにフィーチャーフォンにGPSを搭載することで、人が徒歩で移動しながらも、自分の正確な位置が把握することができるようになり、目的地に到着することが随分簡単になった。


進むGPSの活用


 近年ではこのようにGPSで収集される位置情報を様々な分野へ役立てていこうという積極的な取り組みが見られる。特に位置情報が重宝されるのは災害発生時だ。大規模災害時における安否確認や海難・山岳事故などにおける遭難者の捜索時にGPS機能は非常に役に立つ。とは言え、個人のいる場所の情報ともなると、実際はプライバシー保護との兼ね合いも難しく、現状では人命救助に十分活用されているとは言い難い。2013年3月に北海道で発生した、吹雪の中で父親が娘を抱いたまま亡くなった事故も、消防署が携帯電話の位置情報を携帯キャリアから得られず、捜索を中断した経緯があったという。


 こうした事情をふまえ、総務省では、大規模災害時における安否確認や海難・山岳事故等における遭難者の捜索等、携帯電話やスマートフォンにかかわるGPS位置情報を緊急時において活用するにあたって、ガイドライン見直しを検討している。


 総務省総合通信基盤局消費者行政課の担当者は、「GPS位置情報はプライバシー性が高い情報であり、誤って取得・提供された場合に回復困難な被害が生じる懸念があることから、法律の専門家だけでなく、消費者関係の有識者を集めた検討会で慎重に検討を重ねた」と説明する。東日本大震災が発生した際に同省で行われた「大規模災害時における通信確保の在り方に関する検討会」で、携帯電話の位置情報等の安否確認等への活用が話し合われたこともきっかけの1つだ。


 GPSで取得した位置情報を、大規模災害時における安否確認や海難・山岳事故等における遭難等の緊急時に、どのように活用できるか現在まさに模索が続いている段階だ。

>>GPSで不可能な屋内で位置情報を得る手段とは?

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