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| 慶応義塾大学准教授 神成淳司氏 |
しかし作物は生き物。水のやり方、温度調整、肥料の撒き方など、そのときの作物の状態を診断する「感覚」と、感覚が導きだした状況に即した「判断」が作物の出来に大きく影響してくる。
神成氏はそうした「判断」の元となる「感覚」を代替するセンサーの研究開発にかかわっている。「熟練農家の感覚を手に入れるには2万時間の労働…つまり10年かかります。これでは新規就農者がなかなか現れません。これを、熟練農家の感覚を代替するセンサーを使うことで、5年程度まで短縮できます」(神成氏)
とはいえ、農業機械も“投資”である。センサーが非常に高額では新規就農者にとってやはりハードルになってしまう。神成氏は「1万円程度で作ることができれば、新規就農者の助けになるでしょう」と話す。現在、神成氏は理化学研究所(理研)と共同で研究を行い、理研の宇宙開発用の技術を応用したセンサーを、1万円以内でつくるメドを立てた。このような技術習得を用意にするシステムが多数開発されれば、若手の就農者が増えるきっかけになるかもしれない。
近年の不況のあおりを受け、農業を新しい就業先として選ぶ場合が増えている。農林水産省が発表した2011年の新規就農者数を見ると前年比6.5%増の5万8120人となった。
また、39歳以下は前年度と比べて8.1%増加するなど、若者の割合も前年に比べ増えている。さらに雇用就農者に限ってみると、2009(平成21)年の7万6千人から、2010(平成22)年の8万人、2011(平成23)年の8万9千人と右肩上がりの傾向にある。
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| 雇用就農者数の推移(出典:農林水産省) |
同省では新規就農対策として、年間150万円を最長7年支給する「青年就農給付金」を今年度から開始している。法人経営すればサラリーマンの倍の収入も望めるとも言われる。しかし、こうした支援があっても新規就農者になるには、3年間生活できるような貯蓄が必要になってくる厳しい背景からか、就農者が増える一方で辞める若者がいる事実も目をそらせない。
新規就農者が農家として定着するためには、熟練農家の「感覚」の代わりになるセンサーを使うことで技術習得を容易にして収益につながり易い体制をつくることが肝心になる。こうした研究は、新規就農者にとっても、農業の業界全体の成長にとっても非常に重要なことだろう。
もともと、日本の農作物はそのクオリティの高さで世界でも十分、通用する力がある。神成氏は農業について「新規参入者が働き始めて、5年ないし10年できちんと独立し、職業としてやっていける数少ない分野」だと指摘する。世界に目を向ければ人口は増える一方であり、ワールドワイドに考えれば、食糧に対するマーケットニーズは常に存在するため、市場の将来性は高い。
農業の機械化によって、農作業の効率化が進めば、収益性が高まり、より世界市場に展開できる。アジア諸国のメーカーによる家電業界への攻勢などでここのところ元気のない日本の経済を活性化させる糸口となるはずだ。「機械化」が農業の未来を担っていく役割は果てしなく大きい。
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