特集 機械化が照らす農業の未来
最新の技術が築く新しい農業のカタチ
2012/11/1  2/3ページ

農業機械の新技術の現在


 このように日本では水稲作の機械が普及・進化を遂げる一方で、野菜や果樹の収穫などの機械化はなかなか進んでこなかった。理由としては、稲作以外の分野については市場規模が小さく、そのためメーカーとしても研究開発の投資回収が難しく、二の足を踏んでいたことが挙げられる。さらにリンゴ、イチゴ、キャベツ、白菜など作物ごとの特性に合わせなければならず、ほかの作物の機械への応用が難しいことも、メーカーの研究開発を鈍らせていた。


 一方で、農家側は高齢化・人手不足や海外の安価な野菜との競争が極みに達しており、農業機械の登場を待ちわびていた。例えば、ほうれんそうには、スーパーに出回るほうれんそうと、冷凍食品などで使用される加工用ほうれんそうがある。加工用のほうれんそうは海外の輸入品が非常に安価であり、機械化によるコスト削減は必須である。


 このような現状を受けて近年では、国や独立行政法人が民間企業の開発を後押しする形での農業機械の開発を行う動きがある。その代表例がさいたま市にある、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)である。

全自動接ぎ木機(写真提供:生研センター)   自動イチゴ摘み取り機(写真提供:生研センター)
全自動接ぎ木機(写真提供:生研センター)   自動イチゴ摘み取り機(写真提供:生研センター)

 例えば、非常に手間や時間がかかる接ぎ木を「全自動」で行う「全自動接ぎ木機」。米の70倍もの作業時間がかかるイチゴの作業の中でも摘み取りを行う「自動イチゴ摘み取り機」などは、劇的に作業効率を軽減する。農研機構の生研センター企画部長・西村洋氏は「いちごは非常に手間暇がかかる。しかし100%を機械化しようとすると却ってコストがかかってしまうのが現状。そこでいちご農家の作業の中でも負担が高い“摘み取り”を機械化することで効率を上げた」と話す。

農研機構 生研センター企画部長 西村洋氏
農研機構 生研センター企画部長 西村洋氏

 しかし、開発のコストなどの金銭面は国からのバックアップで現在補っているものの、ほかにも課題点はある。「産地によっては産地間競争が激しく、自分たちの技術をオープンにしたくない場合があります。それが機械などの技術で一般的になってしまえば、生き残れなくところもあるでしょう」(西村氏)。機械化のために一般化する必要がある部分、企業秘密として一般化できない部分。今後は農家側からも機械化について、知恵を出していく必要があるだろう。


熟練農家の経験をシステム化する取り組み


 機械による効率化・作業軽減は飛躍的に進歩し続けているが、冒頭に挙げた人手不足が根本的に解消したわけではない。また近年は人手不足に加えて、高齢化も進んでいる。2012年の農業就業者の平均年齢は約66歳。日本の就業平均年齢が41歳(2006年統計)なので、これは非常に高い数字だ。


 高齢化の背景には当然、新規参入する若手の不足が挙げられる。しかし、新規参入した若手が独立できるようになるまでは10年かかる反面、熟練農家側も10年間も続けて若手を雇い入れるほど資本力もないという矛盾がある。


 こうした問題点を解消するため、熟練農家のみが持ちうる「感覚」や「判断」を “機械”で補うことで技術継承の期間を短くしようという研究がある。慶応義塾大学環境情報学部准教授の神成淳司(しんじょうあつし)氏が考え出したのが、熟練農家の判断を「システム化」することで技術継承を容易にしようというものだ。


 農業も仕事である以上ビジネスとして経営的な視点が不可欠である。ビジネスとして収益を最大化するためには「どの作物を選び、どのように育て、どこへ出荷するか?」を熟考する必要がある。そして経営的な指針が決まったら、課題を達成するため、つまり「目的通りの作物を収穫するため」には、どのように育てればよいのかが重要になってくる。

>>熟練農家の感覚を代替するセンサーとは?

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