特集 タッチパネル技術のアレコレ
大流行・タブレットPCを支える主幹技術
2012/10/1  2/3ページ

 操作の緻密さについては、静電容量が変わった「面」を計算するのに対して、抵抗膜は押したスイッチという「点」で計算する差がある。板倉氏は「アルファベット圏ならともかく、細かい字を描く漢字圏では、抵抗膜方式が当面の間、支持されると思われます」と話す。静電容量方式も、表面ガラスの走査線を増やすほど精緻になる。しかし、消費電力やCPUパワーなどの面で現実的ではない。「絵を描いたりするような作業には、静電容量方式は向いていませんし、線が多く必要な大画面も難しいです」(板倉氏)。


 そのため静電容量方式では、20インチ強が限界とされている。それ以上になると、表面にセンサー用の物理的なワイヤーを走らせる必要がある。ワイヤーはもちろん極力目立たないようには作られているが、それでもさらに画面が大きくなれば視認性に問題が出てくる可能性もある。


 ちなみにマルチタッチについては静電容量方式が先行しているだけであり、抵抗膜方式でも技術的には可能である。実際、製品化もされている。


RPAツール・AIHH

静電容量方式と抵抗膜方式以外の方法

 もちろん現在の主流技術となっている、静電容量方式と抵抗膜方式以外のタッチパネル技術も存在する。冒頭に出た光学式と呼ばれる方法は、四方に枠を取り付け、画面上に光を走らせることで位置を検出する。例えば上から下、左から右に常時、光を走らせ、指で画面上の一点に触れると、その箇所だけ光が遮られるため、位置を検出できる。

光学式の原理。左図のように光線が走っている中で、右図のように指で部分的に光が遮られると「!」マーク箇所のセンサーへ光が来ないことをキャッチして、座標を計算する。実際にはマルチタッチに対応するため「斜め」の光も出している。
光学式の原理。左図のように光線が走っている中で、右図のように指で部分的に光が遮られると「!」マーク箇所のセンサーへ光が来ないことをキャッチして、座標を計算する。実際にはマルチタッチに対応するため「斜め」の光も出している。

 画面表層に光を走らせるという構造上、周りに枠を設ける必要があり、スマートフォンの表面のようにまっ平らにならないのが弱点ではある。しかし通常のモニターであっても、四方の枠を乗せてPCと接続すればタッチパネルにできるという利点もある。対応インチ数も「200インチまでは対応できます」(板倉氏)と、静電容量方式に比べると明らかに幅広く、USB接続のみで使用できるため消費電力もかなり低いと言える。


 光学式以外にも、赤外線誘導方式や電磁誘導方式、超音波方式など目的に応じて、様々な手段が考案されてきた。前述の通りタッチパネルの研究自体は30年ほど前から行われていたものの、花開いたのはここ10年。紆余曲折があったことが伺える。


RPAツール・AIHH

アウトセル→オンセル→インセル

 静電容量、抵抗膜双方の課題としてよく取り上げられるのが“透過率”の問題だ。現在、タッチパネルは実際の液晶パネルの上に張り付ける方法が主流となっており、これを「アウトセル方式」と呼んでいる。そして画面の上にパネルを置くという性質上、元の画面の映像を少なからずさえぎってしまうのだ。


 もちろん極力透明になるように工夫はされているが、静電容量方式の透過率は80%程度と言われており、5分の1がさえぎられてしまっている。これを解消する技術として注目されているのが「オンセル方式」と、将来実現されるだろう「インセル方式」だ。オンセル方式とは、画面の一番表面にある偏光板(液晶の“ギラつき”を抑える)の内側、液晶表示装置を覆うガラスの上に乗せる(ON)する方式。インセルはさらに表示装置内に組み込んでしまうというものだ。

インセルはまだ新しく、一番進んだ技術となる。タッチパネル研究所 板倉氏提供資料を元に作成(クリックすると拡大します)
インセルはまだ新しく、一番進んだ技術となる。タッチパネル研究所 板倉氏提供資料を元に作成(クリックすると拡大します)

 アウトセル→オンセル→インセルになるほど、遮るものが少なくなり画質が良くなるほか、パーツが減るため、厚さや重量、工程などの点でも優れる。現在、スマートフォンの主力メーカーのひとつ・サムスンではオンセル方式の採用が始まり、一方でiPhoneを出しているアップルではインセル方式の研究を進めており、アップル社の最近売り出したはiPhone5はインセル方式と言われている。前出の板倉氏は、当面のスマートフォンのタッチパネル市場は「サムスンの“オンセル”とアップルの“インセル”による争いのなるのでは」と見ている。

>>タッチパネル技術の進化の先

【関連カテゴリ】

トレンドその他