100年残せるバックアップは可能か?
クラウドデータ消失から考える未来のデータ保存
2012/9/3  2/3ページ

 HDDの記録に使われている「磁気記録技術」は急速な進歩を遂げており、単位面積当たりの記憶容量は、直近の10年間で約100倍であり、小型化も急速に進んでいることがわかる。2000年以降、ブロードバンドなどの普及や動画の利用、あらゆるデータのデジタル化により、個人が扱う情報量が飛躍的に伸びたという点と無関係ではないだろう。


 馬場氏は「デジタルデータの単位面積当たりの記憶容量の増加は今後も伸びていく。数倍どころではなく、数千倍というスピードで進んでいくだろう」と話す。もちろんHDDのような磁気的な記録媒体に限らず、DVD・ブルーレイディスクといった光ディスクについても同様の進歩があるだろうとしている。

HDDの生産容量の推移
(出典:日本HDD協会  2012年・HDD業界展望)
HDDの生産容量の推移(出典:日本HDD協会 2012年・HDD業界展望)

RPAツール・AIHH

記録媒体の寿命

 しかし、記録する媒体が“物理的な物”である以上、必ず寿命が存在する。東京大学大学院の馬場教授は「デジタルデータ自体は理論的には劣化しないが、どんなにデータを保存する技術が向上しても、データを格納するストレージは劣化するし、消滅の危険は常にある」と説明する。


 また、OS(オペレーションシステム)が変わると特定の記録媒体が使えなくなるということも避けなければならない問題だろう。形式によって取り扱えるデータと取り扱えないデータが生まれてしまうということも起きている。そのため、OSが異なっても取り扱えるようなデータ形式で保存することが前提となる。例えば、ISOなどで標準化している形式に準拠することで、保存すれば、後々に「OSの違いにより読み込めない」というようなトラブルを避けやすくなる。


 こうした課題がある以上、デジタルデータを扱うためには、クラウドサーバなどにデータを保管しつつも、重要なデータは手元でも管理するといった「バックアップ」が求められてくる。さらに、馬場教授は「デジタルデータの保存にはHDDの定期的なメンテナンスやシステムの刷新、サーバルームの場所代・空調など様々な“お金がかかる”というということも覚悟してかからなければいけない」と付け加える。


 これらコストの面も考慮に入れる以上、膨大なデータの中から、本当に必要最小限の、必要十分なデータというものを見極めて「バックアップ」をとり続けていくという工夫が求められる。

J国立国会図書館電子情報部長 中山正樹氏
国立国会図書館電子情報部長 中山正樹氏

 インターネット資料を収集し、また、貴重な資料をデジタル化し保存する取り組みを行っている国立国会図書館の電子情報部長・中山正樹氏も「記録密度が上がっていくことは確かだが、その記録媒体が永久でない限り、必ず別の媒体に移す『マイグレーション』と呼ばれる作業が発生する」と指摘する。さしあたり今は大量のHDDで構成されるGlusterFSのような分散ファイルシステムに格納し、記録媒体が数年間で壊れることを前提とし、その間に古い媒体を新しい媒体にコピーをしていくようにしていると話す。

>>期待される新しい保存技術とは?

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