フィルタリング大解剖!
スマートフォン時代に必要なフィルタリングとは?
2012/6/25  3/3ページ

総務省の取り組み


 こうしたなか、総務省では現在どのような取り組みが進められているのだろうか? 昨年10月に公表された総務省のICT諸問題研究会・青少年インターネットWGの提言では、スマートフォン利用時における無線LAN、アプリ経由でのインターネット利用の際にフィルタリングがかからない場合について、関係事業者に求められる対応が示されており、「 青少年保護・バイ・デザイン*1」という考え方も同提言に盛り込まれている。


 この提言を踏まえ、関係者や消費者団体によって構成される「 安心ネットづくり促進協議会*2」の「スマートフォンにおける無線LAN及びアプリ経由のインターネット利用に関する作業部会」が昨年10月に設置され、2012年6月8日に最終報告書が公表されたところだ。


 千葉大学の藤川大祐教授を主査とした同作業部会の報告書においては、作業部会での議論に基づき、青少年のスマートフォン利用に関する現状を整理し、今後に向けて関係者が果たすべき役割が示されている。


 現状では、無線LAN接続やアプリのダウンロードなどを制限する機能や、無線LAN接続時にネットワークを問わずフィルタリングが有効なソフトを携帯電話事業者が提供している。そのほかプラットフォーマー(GoogleやAppleなどのOS事業者)においても年齢別にカテゴライズされたアプリの ペアレンタルコントロール機能*3により一定のフィルタリング環境を提供している。


 しかし、こうした機能が保護者・利用者の立場からはわかりにくく、必ずしも十分理解されているとは言えない。そのため従来の携帯電話に比べると今後、更なる取り組み強化が必要となる。こうした取り組みと併せて利用者・保護者も、自らが自主的に学び、自ら解決する能力を身につけるためのリテラシー向上も必要とされている。


 また、今後に向けた具体的対応として「スマートフォンに関する利用者への説明」、「関係事業者及び利用者・保護者の連携によるフィルタリング改善」、「利用者リテラシーの向上」の3つを挙げる。これまでフィーチャーフォンで培われた青少年インターネット環境整備に関するノウハウを活かし、スマートフォンでも青少年がリテラシーに応じて保護される体制整備と、利用者のリテラシー向上に向けた取り組みをなお一層推進する。それによって関係事業者による相互連携・一体的対応の必要性を示している。


 同作業部会にオブザーバー出席していた総務省においても、青少年・保護者を含む利用者に対するスマートフォンに関する注意点や、フィルタリングの周知には余念がない。


 今後は各地域の総合通信局等も活用し、スマートフォンを利用する際の注意点などを全国で周知し、利用者のリテラシーの向上に一層努めていく方針だ。


 総合通信基盤局課長補佐の園田雄二氏は「スマートフォンが普及する中で、ますますサービスや機器の変化のスピードは速くなってきている。このような変化に迅速に対応しつつ青少年のインターネット環境整備を進めるにあたっては、青少年インターネット環境整備法を前提に、民間の自主的取り組みを行政として支援していくことが重要だと考えている。もちろんその進捗状況によっては、別の方法を検討する必要も出てくるだろうが、まずは見守りたい」と話す。


今後の対応


 スマートフォンの普及で、フィルタリングには今後どのようなことが必要なのだろうか? 

携帯電話事業者各社の有害サイト制限サービス
(出典:電気通信事業者協会公表資料より)
携帯電話事業者各社の有害サイト制限サービス (出典:電気通信事業者協会公表資料より)

 前述のように、携帯電話事業者側もアプリのインストールや起動を制限する無償のソフトを提供したり、無線LANの使用制限をかけるソフトなどスマートフォンならではの青少年保護機能を充実させてきている(上図参照)。


 これらの取り組みについて、EMAは「我々は第三者機関なので全体のスキームを提唱するわけではない」と話す。業界の中でこれまで関わってこなかった団体を含む様々なプレーヤーが、意見を持ち寄って、そのなかで合意形成をする必要がある。プレーヤーが増えた分、利害関係がからむためEMAも慎重に対応しなければならない。そうしたことを視野に入れた取り組みが必要というわけだ。


 総務省の園田氏は、スマートフォンのアプリについて「現状提供されているアプリに関する青少年保護機能では保護者が個別のアプリを選別し『起動させる』『起動させない』の設定をしなければならず保護者の負担が大きい」という。今後は保護者の負担をなるべく減らし、利用しやすい機能が提供されることが望ましいとのことだ。


 またI-ROIの松原氏が話すように、これからは保護者の関心の喚起も見つめ直さなければならない。今の保護者の世代は既に「携帯電話世代」だ。携帯電話について「理解している」と自分では認識しているため、却って周知がしにくい。スマートフォンのフィルタリングについて理解を進めていくためには、一工夫も二工夫もしなければならないだろう。


 スマートフォンが登場し、ますますその重要性に磨きがかかるフィルタリング。「使いやすさ」に向けてまずはじっくりと腰を据えて取り組み、地道に「周知」させていく姿勢が問われてくる。関係する事業者が、国を問わず増えてくる分、しっかり利用者の立場に立った対応が求められることになる。

(山下雄太郎)

注釈

*1青少年保護・バイ・デザイン
法律での定めが無い場合には、関連事業者が製品やサービスなどを提供する上で、青少年がインターネット上の有害情報から保護するべき仕様を自主的努力として検討し、真に民間の自主的・主体的な取り組みとして実践するものという考えのこと。

*2:安心ネットづくり促進協議会
インターネットの違法、有害対策を行う民間主導の団体。インターネットの光と影を正しく知り、楽しく安全に使う運動を展開したり、スマートフォンに関わる青少年保護に関して関係者の取り組みを共有して課題の検討を行うなど活動している。

*3:ペアレンタルコントロール機能
子供に悪影響を与える可能性を与えるサービスやコンテンツについて、親が利用制限をかけることができる機能のこと。

この特集のキーワード

【キーワード解説】有害情報