フィルタリング大解剖!
スマートフォン時代に必要なフィルタリングとは?
2012/6/25  2/3ページ

 一方、フィルタリングには様々な課題がつきまとう。一つはひとえに「有害情報」といっても男女、高校生と小学生、あるいは価値観が多種多様なため、画一的なフィルタリングは青少年の中には過度な制限になる場合があるという問題。もう一つは、サイトを分類しカテゴリごとにアクセスを禁止するという技術的な問題から、本来ならばアクセス制限をしなくてもいいと思われるようなものについてもアクセス制限がかかり、利便性を阻害するという問題だ。


 これらの問題については、前述の中間とりまとめで提言された「利用者側がある程度個別に設定ができるような」カスタマイズ機能や「特定分類制限リスト」への民間の第三者機関が認定したリストの反映であり、現在では、こうした対応が実際になされている。


EMA事務局長 吉岡良平氏 
EMA事務局長 吉岡良平氏 

 こうしてフィルタリングの実施・普及に尽力していくなかで、成果は上がってきた。携帯電話におけるフィルタリングサービスの利用数は2012年3月末時点でおよそ851万人、2007年9月と比較すると4倍の伸び率だ。内閣府の調査では、小学生の7割、中学生の6割が導入しており、かなりの高い割合で利用されていることがわかる。これは関係省庁と民間が力を合わせて地道に周知活動してきたことが着実に形になってきているといえる。


スマホの登場で対応を迫られる業界


 このようにようやく青少年に普及してきたフィルタリング。しかし、近年普及しつつあるスマートフォン(スマホ)が、業界に新しい対応を迫っている。スマートフォンはガラケー(あるいはフィーチャーフォン)と異なり3G回線以外にも、無線LANなどの多様な手段でインターネットにつなげることができる革新的な端末だ。


 そもそもガラケーにおけるフィルタリングは、3G回線の通信途中に携帯電話事業者(携帯キャリア)が制限をかけている。そのため、携帯キャリアを経由しない無線LANのアクセスポイントを経由したインターネットは、従来のフィルタリングが機能しないという問題が生じる。

スマートフォンのフィルタリング
スマートフォンのフィルタリング

 「それでは、無線LANにも対応可能なフィルタリングを原則的に提供させれば良いのでは」とも考えられるが、実はここには法的な壁がある。事業者が青少年にフィルタリングを提供する根拠となっているのは「青少年インターネット環境整備法」のうち、フィルタリングに関係する17条~19条が主だ。


 このうち携帯電話に関係するのは同法律の17条。これは「携帯電話のユーザが青少年である場合には、保護者はその旨を申し出るとともに、保護者が不要としない限り、原則的に『携帯キャリア』がフィルタリングを提供しなければならない」といったものだ。


 一方、18条・19条は主にPC等の機器でのインターネット利用に関わる。18条は「インターネット接続事業者(ISP)は利用者から申し出があった場合はフィルタリングを適用しなければならない」、19条は「製造者は、容易に利用者がフィルタリングを使えるようにしておかなければならない」というもの。最近PCを買うと既にフィルタリングソフトが入っているのも19条の関係からだ。


 スマートフォンの場合、3G回線のほかに無線LANが使えるのは前述の通り。無線LANを経由したインターネット接続に関して、携帯キャリアは関知できない。なぜなら3G回線経由ならば携帯キャリアを経由するため制限もかけられるが、無線LANは全く違う事業者を通るため手の出しようがないからだ。PCと同じように機器にフィルタリングソフトをインストールするならば、回線を問わずフィルタリングを機能させることができる。


 しかし、一方で19条のなかには「携帯電話・PHSを除く」と規定されており、法律上の「携帯電話」に分類されているスマートフォンでは19条に基づいてPCと同様の対応を義務化できない。そのため、スマートフォンに関しても17条の規定に沿って対応を考えることとなる。


 また、こうした無線LANの問題のほか、スマートフォンではこれまでのようにブラウザによりインターネットのサイトを閲覧するばかりでなく、アプリと呼ばれる専用ソフトでインターネット上サービスを利用することが一般的になりつつある。アプリの仕様上、フィルタリングではアクセス制限ができない場合もあり、スマートフォンではフィルタリングという考え方に加え、アプリの利用を制限することで、青少年が有害な情報を閲覧する機会を最小にする方法が提唱されている。このアプリの利用制限においては、フィルタリングの場合と同じように、一律な利用制限が過度な制限とならないような工夫も求められるところである。


インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)の反応


 スマートフォンの普及に従って「これまでのやってきた取り組みの後押しにつながる」と話すのは、インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)代表理事付の松原卓氏。同氏が所属するI-ROIは会員企業が公開するインターネット上のコンテンツに対して健全性認定を実施する第三者機関だ。


 会員企業は自社のコンテンツについて、社会的に問題ないかどうか自ら評価(セルフレイティング)を行う。I-ROIはその評価について最終的に審査を実施。インターネット上のコンテンツを全年齢、12歳以上、15歳以上、18歳以上と年齢区分し、安心マークを表示することで内容の健全性、安全性を証明している。I-ROIではPCにおいてインターネットのコンテンツを審査してきたため、それを直接閲覧できるスマートフォンがI-ROIの展開の後押しにつながるという。

I-ROI代表理事付・松原卓氏
I-ROI代表理事付・松原卓氏

 地道に普及に努めてはいるものの、I-ROIでは「まだまだユーザの意識が低い」(松原氏)という認識だ。同氏はさらに、まずは一般の企業から、子供たちに見せる自分たちのサイトが健全化どうかをしっかり確認するという意識を高めることが重要だと指摘している。

>>スマホに関する総務省の動きとは?