
「電話回線とIP電話はどうつながっているの?」「“バリ3”なのに通話が切れる」「ドコモで続いた不具合はいったい何?」…。スマホやタブレットPCなど、モバイル端末がここ2~3年で急速に普及している。便利になる一方で、普段使っている私たちの通信はどのように成り立っているのか、分かりづらい部分がある。
今回は通信の歴史も踏まえて今一度、スマートフォンなどがどのようにつながっているかを解きほぐし、未来に行き着くところはどこなのかを探ってみる。
そもそもスマホはどうつながっているのだろうか? 旧電信電話公社(現NTT)などに勤務し、著書『携帯電話がつながらない本当の理由』がある松野恭信氏は、「大きく分けると、スマホを含めた携帯電話は『電話』機能と『データ通信』機能がある」と話す。
電話機能は、電話局の交換機を通して音声データを電話回線でつなげるもの。電話が通じるために必要なのが「関門交換機」、通称POI (Point Of Interface)と呼ばれるものだ。
例えば、NTTドコモの携帯からソフトバンクの携帯へ電話をかけるとすると、それぞれの通信会社を結ぶ窓口になるのがPOIである。さらにこのPOIは、ドコモからソフトバンクの携帯向け、ドコモからKDDIの固定電話向け、といった具合にそれぞれの回線やサービスごとに必要となってくる。松野氏は「通信が多様化すればするほど、それぞれをつなぐPOIの役目は重要になります」と述べる。
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通信業界に詳しい松野恭信氏 |
一方の『データ通信』は、音声だけでなくあらゆるデータの通信を行う。『電話』機能と同じく電話局につながり、ここにあるパケット交換機からゲートウェイを通じてインターネットにつながる仕組みになっている。
インターネット経由のIP電話と、電話回線を利用した固定電話がつながるのは、IP電話から発信された音声データがインターネット経由で最寄りの電話交換機を通り、固定電話へ接続されているためだ。
「通信というのは携帯電話もあれば、固定電話、ケーブルテレビ、WiMAXなど、色々なものがあります。これらがシームレスに接続されていなければ『通信』の意味がありません。ですから、通信が発達していけばいくほど、POIは重要性を増していきます」(松野氏)。
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自動車電話のサービス開始から30年以上経ち、様々なサービスが生まれた(自動車電話とショルダーフォン写真協力:逓信総合博物館) |
移動しながら電話が可能である“携帯電話”の走りは、もう知る人も少なくなったであろう1979年に始まった「自動車電話サービス」だ。1980年代には持ち運びができるような電話、通称“ショルダーフォン”と言われるものが出てくる。
1994年には、レンタル品であった携帯電話が買い取り制度となり、これ以降、携帯電話は急速に普及していく。それから15年以上が経った現在、モバイル端末は劇的な進化を遂げたが、「自動車電話」でも「スマートフォン」でも、「端末と基地局間の無線でのやりとり」という仕組みは変わっていない。
無線の仕組みが変わっているだけで、どちらの通話もモバイル端末から基地局を無線でつなぎ、基地局間は有線で結ばれたネットワークによって運ばれていく。自動車電話などで使われていたのはアナログ無線、世代で言えば第1世代となる。