2011年HH News & Reportsが独断で決めたIT10大ニュース
2011/12/19  2/4ページ

存在感をさらに増したSNS


 2005年頃から、急速に浸透しているSNSの勢いが強まる一方だ。mixiは、様々なサービスを展開(mixiアプリ、mixiゲーム、mixiページなど)するなか、国内ではゲームを中心としたSNS、GREEとDeNA(モバゲー)も勢力を拡大している。一方、SNSよりもさらに緩いつながりと手軽さで普及しているTwitterも今年存在感を増した。



 Twitterと言えば「第5位:ネットワークで触発されたチュニジア、エジプト革命」ほど、象徴的な出来事はない。23年間長期政権を続けてきたベン・アリ政権を崩壊させたチュニジアのジャスミン革命、そして同じく29年間政権を維持してきたムバラク政権を打倒したエジプト革命。2011年にはそういった変革のうねりが中東諸国に飛び火して、政権打倒につながったことは記憶に新しい。TwitterやFacebookといったSNSは、これらの革命に大きな影響を与えた。


 エジプト革命ではムバラク政権によってインターネットが遮断されるなど、政府がサービスを停止した事実が明らかになっている。しかし、こうした独裁政治による情報統制が、かえって市民の反発を招き革命を進めた可能性も高い。千葉大学大学院人文社会科学研究科の石井徹哉教授も「エジプトの場合は、政府がTwitterの情報を遮断したことが逆効果だった。市民を無理に押し込めようとすると、より激しく反発する」と語る。


 石井氏は「Twitterは正確な情報を流すということで重宝される。一言二言の言葉や画像などの短い表現になるためか、つぶやきを見た人の反応がより顕著に表れる傾向がある」と話し、そうしたTwitterの側面が今回の強い勢いを持った「革命」として表れていたと指摘している。



 「第10位:武雄市Facebookへ全面移行」もSNS社会の象徴と言える。2011年の8月に佐賀県武雄市が、市役所のホームページを全面的にFacebookへ移行した。現在、国内の複数自治体が自主的にクラウドサーバを作り上げたり、あるいは総務省が構想する自治体クラウドを提唱したりと、何かと「自治体×クラウド」の話題は尽きないが、移行へのスピードと話題性では武雄市が群を抜いていた。Facebookのようないわゆる「SaaS」ならば、管理費用なども浮く。そもそもFacebookへ移行すること自体が話題にもなったため、PV数は以前の数十倍になっているとのことで、効果は高いと言えるだろう。


武雄市F&B良品のページ。販売者の素性がはっきりしているので取引も安心だ
武雄市F&B良品のページ。販売者の素性がはっきりしているので取引も安心だ

 11月にはなんとFacebook上で、武雄市の特産品の販売ページ「F&B良品」をオープン。販売を開始して10分で10500円もする商品が売り切れになるほどの人気を誇り、様々な自治体から「ノウハウを教えてほしい」という問い合わせも殺到している。


 F&B良品の担当者は「3年後には、1,000商品の販売で売上10億円を目指して商品の拡充に努めたい。さらに今後はこの仕組みを全国の自治体に広めていく」と意気込みを語る。近年、行き詰まり感のある日本中の自治体にとって「突破口」として参考にすべきところが多くあるように感じる。


震災を経てITが果たす役割


 SNSも良い面ばかりではない。3月11日の東日本大震災時では、「第4位:3.11後、Twitter利用の光と影」が浮き彫りになった。


 電話・メールがつながらない中、連絡手段としてTwitterをはじめとするSNSは重要な連絡ツールとなっていた。被災地では安否の確認や食糧などのライフラインの確保、またボランティアの人々との交流手段として使われるなど、その活用は多岐にわたり、大きな注目を浴びた。


 一方で、震災直後流れたデマ拡散にもTwitterが利用された。「千葉湾岸の火災で有害な雨が降る」「放射線対策にイソジン・ワカメがいい」といったものなど、科学的・医学的な知識不足によるデマがTwitterを介して広がった。


 このような事態について、メディアジャーナリストの津田大介氏は、今年10月に開催された情報セキュリティワークショップ in 越後湯沢内で「ソーシャルメディアにおいて個人の間で信憑性のない情報が拡大していくことが懸念される。これからの課題はデマとどう向き合うかが大切だ」と話す。震災という緊急事態はSNSの課題点も露わにした。



 震災に際しては別の面からも問題点が露出した。企業が迅速に通常業務へ戻るための仕組みである事業継続計画(BCP)・事業継続管理(BCM)だが「第7位:BCPとIT、阪神大震災の経験生かされず」ということが多かったようだ。

被災直後の仙台空港周辺の様子
被災直後の仙台空港周辺の様子

 組織のBCPなどを専門に扱っている雑誌「リスク対策.com」の編集長・中澤幸介氏は、「東日本大震災時の企業のBCPは、効果を発揮したところも多少あったものの、ほとんどの企業で機能しなかったようだ」と振り返る。


 東北3県の被害があまりにも甚大だったため、現地の工場と本社間での連絡が途絶え、BCPを発動すべきかどうかの判断すらままならなかった企業が多数あったという。ITを含めた様々なツールで自社の情報収集が確実にできたかどうかが、事業継続の分かれ道だったようだ。


 加えてBCPがうまく機能しなかった原因の1つには、広報部門が効果的に活用されていなかったところもあるという。「自社の被害状況と業務への影響がどの程度なのか、取引先などのステークホルダーに対しての情報発信が重要となる」(中澤氏)。その広報活動をしていくためのツールとして、ITが十分に生かされなかったようだ。一方、自社のWEBサイトで、被害状況や今後の見通しを英語で発信した企業もあった。


 震災後、安否確認システムの発注が増えたというが、中澤氏は「ツールを導入してクローズにしてしまっては、見せかけの対策に終わってしまう」と危惧する。「そもそも阪神大震災から16年、当時に比べればITなどのツールは激増しているにもかかわらず、今回の震災で右往左往してしまっている。使い方がおかしいとしか思えない。企業の社内の仕組みを根本から考えなければ問題の解決にはならない」と語気を強めており、課題もまだまだ多いようだ。

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