東日本大震災とIT BCPとインターネット網のあるべき姿
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2011/5/23  3/3ページ

東京に集中しているインターネット


 JPRS広報室長の宇井隆晴氏は「ツールの1つとして、今回の震災で『動き続けたインターネット』という言われ方がなされていますが、動いていたのは東京で(大規模な被害が)なかったからなのです」と、インターネット活躍の背景を語った。


 宇井氏が問題に挙げるのはISP事業者などのデータセンターやIX(ISP同士をつなぐ接続ポイント)などの立地である。同氏によれば、日本のデータセンターの大部分が東京に集中しているという。「インターネットと言えば『様々な場所にネットワークがある』というイメージですが、実際は東京に集中しています。この問題は以前からありましたが、なかなか解消されていませんでした」。


 顧客へのサポート体制やIXの近さもあり、東京にデータセンターが集中しやすくなってしまうのが現状だ。しかし近年広まりつつあるクラウド・コンピューティングは、そもそもユーザ企業がデータの場所に拘束されない、ということが前提にある。「クラウド・サービスや郊外型のデータセンターなど、物理的な拘束を段々と排除できるような要素も出てきているのは確かなのです。データセンター事業者さんにしてみれば、東京にある必要があるのか? ということなのです」(宇井氏)。


 東京に本社があり、北九州などにデータセンターを分散させている大手IT企業の幹部は、分散の理由はコスト面から考えてのことだったという。「事務所よりも高いスペースにサーバを置くくらいならば、安い所を探そうとしたのがきっかけです。拡張性の面でも、安い土地を確保しておく方が、都内で将来分の増設を踏まえてビルのフロアを確保するよりコストがかかりません」(IT企業幹部)。


 ただ、地方へのデータセンター分散やネットワーク構築はなかなか難しい。郵政省(現総務省)の時代に、地方IXを機能させるというプロジェクトなども立ち上がっていた。地方にIXを作り地方のIXにつないだら補助金が出る、などという試みもあったが、ことごとく失敗したという。「日本の企業が関東と近畿に集中している中、企業の少ない地方で、利益の出るようなIXやコンテンツプロバイダはやはり存在できません」(IT企業幹部)。


 ネットワークが整備され、電力も2系統以上あり、それなりに人口の多い場所。以上がデータセンターを分散させる際の現実的なポイントとなりそうだ。


インターネットは「壊れる」前提で対策を


 BCPにITが不可欠となっている中で、インターネットがどうつながるか、といったインターネットの仕組みの基本を今一度押さえておく必要がある。「そもそも機械は壊れるもの、回線は切れるものなのです。そうなったときでも大丈夫なようにしておくことが重要なのです」と宇井氏が訴えるように、できうる限りのリスクヘッジが必要だ。


 今後、東京に集中するデータセンターの分散など、緊急時のインターネット網のあり方について企業が取り組む一方、行政側も、道路網と同じようなサポートをインターネット網にもしていくことが必要となってくる。


 現在被災地では、実験用のインターネット衛星「きずな」を利用した航空自衛隊による被災地と司令部間の映像伝送、被災地用の無線LAN提供などが宇宙航空開発研究機構(JAXA)や情報通信研究機構(NICT)によって行われている。このように、インターネットが衛星を介して利用できるようになれば、既存のインターネット網が寸断された場合でも問題なく運用できる。


 2万人の犠牲を無駄にしないためにも、企業や国がBCPの構築について、東日本大震災を教訓とし改めて考えなおす必要があるだろう。

(HH News & Reports)

【上場企業200社緊急アンケート調査概要】
調査方法:電話による聞き取り、Eメール、FAX
調査対象企業:東証一部上場企業のうち200社
回答数:29社  回答率:14.5%
調査期間:2011年3月~4月

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