デジタル・ヒストリー
1979年9月28日 PC-8000シリーズ発売
PC-8000の実機が見たかったので東京理科大学近代科学資料館*1に行ってきた。予想を裏切るほど充実した展示で、計算と計算機について考えさせられた。
太古から人は数の秘密を知りたい、計算を解きたいという性質を持っていたらしい。この性質を起点に、今回は日本人が作ったCPUに始まり、トレーニングキットが下地を作り、輸入品が入り始めた70年代最終年に国産の完成品としてNECから発売されたPC-8000シリーズからパソコンの歴史が始まったことを辿ってみたい。
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マイクロコンピュータ黎明期概観
どうして人は数の秘密に魅せられ計算をしたがるのだろう。「支那そろばん」「算木」「計算尺」「手回し計算機」「パスカルの計算機」「バベッジの階差エンジン」などなど東京理科大学近代科学資料館の展示物たちは、この秘密を解き明かせと言わんばかりに静かにたたずんでいた。
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| 多項式の近似計算で対数や三角関数の数表を作るため使われた「バベッジの階差エンジン」 |
革新的な部品はいつも人を惹きつける。ブラウン管、真空管、トランジスタ、IC等など、そして1974年4月にインテルから発表された8ビット*2のマイクロプロセッサ*3(以下CPU)8080もその1つだった。
CPUは、論理演算を行う装置で、複数のレジスタと呼ばれる一時的な記憶領域の間で演算を行う手順を設計することをプログラミングという。
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1974年12月、Altair8800(アルタイル=七夕の彦星)の名を冠したパーソナルコンピュータ(以下PC)が米国で発売された。外観は箱。筐体正面を見るとスイッチがたくさん並んでとっつきにくく、キーボードも画面もない本体だけの製品であった。それにもかかわらずAltair8800はコンピュータに将来性や魅力を感じる人々を即座に魅了し、様々な付加装置やプログラムの自作が始まった。
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| NECのTK-80。緑色の基盤、16進キーボード、表示用LEDだけのシンプルな形 |
1976年8月3日、NECからマイコントレーニングキットとしてTK-80。ワンボードでケースも無く、ボード上には16進キーボードと数字を表示するために7セグメントのLEDがのっているだけのまさにトレーニング用だった。日本でもハンダごてを使える人たちにより付加装置やプログラムの自作が始まった。
1977年にAppleIIがやってきた。白いプラスティックにキーボードがマッチした少し大きめのタイプライターのような筐体、ハンダごてができなくてもプログラムだけに集中できる完成品が持つ拒みがたい魅力があった。AppleIIの唯一の欠点は480,000円という値段だった。
同年1月には米国コモドール社から画面まで一体化したPET-2001が発売。国内市場は輸入製品に席巻された感があった。
完成品の登場
1978年11月にシャープから一体形のMZ-80K。198,000円だがセミキットだったので広く普及するには至らなかった。
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| モニター、キーボードを一つの筐体に収めたユニークな形のPET-2001をアップデートしたCBM3032 |
1979年9月28日、NECからPC-8000シリーズ。キーボードと一体化された本体にN-BASICを搭載し168,000円という戦略的な価格設定と国産でハンダごてがいらない完成品として広く受け入れられた。
3年後の1982年10月、16ビット*4CPUである8086(5MHz)を搭載したPC-9800シリーズにより国内のPCは16ビット時代に突入した。
1989年、東芝のJ3100SSダイナブックによりラップトップパソコンが始まった。
初期の頃のPCの使い方はCPUを手に入れ、ハンダごてを使って機材を付加し、プログラムを作るという流れだった。PC-8000という完成品の登場によりハンダごてが使えなくてもプログラムを作ることだけに集中できる環境が整った。専門の勉強をした人だけではなく、誰もがプログラムを作成できる段階に至った。この意味から完成品の出現はエポックだったといえる。
以後、PCはCPUの進化とともに新製品が生まれ、旧機種が消滅するサイクルを繰り返している。
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注釈
*1:東京理科大学近代科学資料館
記事を書くにあたり、東京理科大学近代科学資料館の許可を得て写真を撮らせていただいた。
*2:8bit 情報を「0」か「1」が入る箱8個で表すもの。8ビットとは-128~+127までの整数で情報を表現する。
*3:マイクロプロセッサ(CPU) コンピュータは情報を「0」「1」の電気信号に変換して記憶・処理している。「0」か「1」になる値を1つの箱と考え、いくつの箱のかたまりを処理できるかで能力が決まる。8つの箱を処理できるものを8ビットのCPUと呼んでいる。
*4:16bit(ビット) 16ビットとは-32768~+32767までの整数で情報を表現する。
・BASIC プログラム言語。初期のPCは電源を入れるとBASIC言語のプログラム入力画面になるものが多かった。
・CP/M 米国デジタルリサーチ社が開発したOSで1976年に発売されたシングルユーザー(1人用)、シングルタスク(一時に1つのプログラムしか動かせない)のオペレーティングシステム。