デジタル・ヒストリー:1872年8月 QWERTY発表

デジタル・ヒストリー

1872年8月 QWERTY発表

2014/8/28

 デジタル製品の区切り・節目となる日を皮切りにして、製品・業界の歴史を追う「デジタル・ヒストリー」シリーズ。第4回は、現在世界中で使用されているQWERTY配列のキーボードの発生に関わる謎を追う。

QWERTY年表

QWERTY発明と普及


 今使っているPCのキーボードを見て頂けるだろうか。中心はアルファベットが3段にわたって埋め尽くしていると思う。この3段のうち一番上の左端にはQがある。Qから順に右に読んでいくとWERTYと続く。そのためこの配列はQWERTY(クワーティ、クウェルティ)配列と呼ばれる。


タイプライターのキーボード
タイプライターのキーボード

 QWERTY配列のキーボードが誕生したのは、ノイマン型PCが登場する1949年より半世紀以上前の1872年。タイプライターのためのキーボードとして誕生した。その誕生には様々な説があり、一番有名な説が「タイプライターの機構が貧弱で、あまり早く打ち込むと動作不良を起こすため、適度な速度でタイピングできるように調節した」というもの。


 1872年にChristopher Latham Sholes(以下ショールズ)は、自身の開発したQWERTYキーボードを発表した。ショールズのQWERTYは、タイプライターや事務機器を製造するレミントンというメーカーに特許を買われ、主力商品として出される。そして1890年台になるとレミントンを始めとした事務機器のメーカーをファウラーが買い占めて、主力商品としてQWERTYキーボードのタイプライターを出す。


1世紀以上経った現在でも世界的に利用されている
1世紀以上経った現在でも世界的に利用されている

 これにより市場において多くのシェアを占めると、新しいキーボードが発明されてもタイプライターを生業とする人々は再訓練コストの必要性から、新しい配列の製品に移ることがしづらくなった。1985年に経済学者のポール・デービットがこのような寡占状況について「QWERTYの経済学」という論文を出しており、以来、ときおり経済学の研究テーマとしてQWERTYの普及は取りあげられている。またQWERTYの名も彼の論文から来ているようだ。


QWERTYに関する疑問


表示が変われど、配列は変わらない
表示が変われど、配列は変わらない

 IBMのように、タイプライターと同時にコンピュータを開発していたメーカーもあった。そうしたメーカーがタイプライターのキーボードを、コンピュータに流用したことも普及した原因の1つだろう。またすでにタイプライターの普及によりQWERTYに慣れている人が多かったこともある。コンピュータが開発されると、キーボードにはQWERTYが採用されていった。1968年にはQWERTYは米国標準規格となり、その地位は揺らがないものとなった。技術が発達した現在ではタッチパネル上の仮想キーボードや、レーザー投影式のキーボードなどが開発されているが、配列自体は変わらずにQWERTYのままだ。


 QWERTYが開発された経緯にはタイプライターの機構の問題があったことは前述した。確かにQWERTYは、不可思議な配列であり、その説にうなずけないこともないが、実はこの説には反論もある。一番の反論は、そもそもQWERTYはジャムを起こさない適度な速度で打つように、つまり当時発売されていたキーボードの中でもタイピングが本当に「遅くなるように」設定されていたのかという疑問だ。


 というのも、米国ではタイピングのコンテストが開かれて、QWERTYで打鍵した人が優秀な成績を収めた。また、当時発売されていたほかのキーボードと比較検証をして、劣ることはないという調査結果も出ている。こうしたQWERTYの謎には、多くの学者が論文を出しているが結局のところ未だ確定的な結論に達していない。我々が毎日のように触れている機器にも意外と謎は残っているものだ。

(井上宇紀)

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