
デジタル・ヒストリー
2004年6月14日 NOKIA 6630発表
個人主義の象徴と言おうか。スマートフォンは、個人が持つ無数の情報を小さな機体に詰め、連絡、娯楽、情報収集などを一手に受ける現代の象徴とも言える端末だ。スマートフォンの起源には様々な説があるが、日本においてはフィンランドの携帯メーカー・NOKIAから発売されたスマートフォンが最初の端末と言われている。
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NOKIA日本上陸
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写真は6630のコンセプトを受け継いだNOKIAの後継機、705NK |
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スマートフォンながらテンキーを持つ |
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スマートフォン普及に関して「iPhone」の存在が大きいことは疑いようもない。しかしiPhoneが国内で販売された最初のスマートフォンというわけではない。
スマートフォンの普及に先鞭をつけたのは、世界的に見るとNOKIAだ。スマートフォン草創期の世界的なシェアはフィンランドの電子機器メーカーNOKIAの製品が多数を占めていた。インターネット機能に特化したPDA端末に、通話機能を付けたスマートフォン。3G回線の普及とともに携帯電話を高機能にした日本と異なり、海外ではこうした端末がかなりのシェアを占めるようになった。
2004年6月14日。NOKIAは香港で開催していたNOKIA CONNECTION 2004にて、新機種「NOKIA 6630」を発売すると発表した。6630はガラケー天国だった日本市場に向けても、同年末に発売することも決まる。こうしてiPhoneが発売される4年も前に日本初となるスマートフォン販売が決定された。
キーボード付きスマートフォンの栄枯盛衰
NOKIAシリーズのスマートフォンの特徴は、ストレートタイプのスマートフォンながらキーボードを備えていたという点だ。発売された後継機にもそのコンセプトは受け継がれている。
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W-ZERO3。QWERTYキーボードにより、文字を打ちやすく、ビジネス的な用途があった |
物理的なキーボードがついているスマートフォンはコンセプトを変えつつ、出されている。例えば2005年にシャープが開発した「W-ZERO3」(ウィルコム)はスライド式のQWERTYキーボードを装備。Windowsモバイルを搭載して、ワードやエクセルなどの事務用ソフトウェアが使えるなど、当時のほかのモバイル端末とは一線を画していた。
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AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH。 フィーチャーフォンにも近い使い勝手 |
こうしたビジネスマン向けとは全く異なるコンセプトでも、スマートフォンは出されている。2011年に出された「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」(ソフトバンク)は、折りたたみ式のスマートフォン。Androidを搭載しながらその見た目はまるでフィーチャーフォンだ。フィーチャーフォンに慣れ親しんだユーザ向けのようだが、タッチパネルにも対応しており、仮想キーボードを表示させて文字を打つこともできる。
キーボード付きのスマートフォンはメーカーの工夫により、一部の層に受け入れられるものの、主流にはならなかった。原因は様々に考えられるが、タッチパネルのスマートフォンに比べて、キーボードの分だけ画面が小さくなってしまうという点が理由として挙げられる。2012年頃になると、キーボード付きのスマートフォンはほとんど姿を見せなくなってしまい、現在ではかろうじて折りたたみ式のスマートフォンが数台リリースされているのみになっている。
主流はタッチパネルへ
2008年になると日本国内で初のiPhoneが発売された。ご存知の通りストレートタイプのスマートフォンで、物理的なボタンがほとんどないその姿はかなり衝撃的。日本国内で最初にiPhoneを発売したキャリアメーカーであるソフトバンクの販売店では発売日に列ができるほどの話題となる。iPhoneは、操作をほぼタッチパネルに絞ったことによる、すっきりとしたデザインが非常にキャッチーだったことから、デジタル製品に詳しくない層からも、幅広い支持を得た。
同時に、この時期に静電容量方式のタッチパネルでのマルチタッチが容易に実現できるようになったこともスマートフォンの飛躍に一助している。タップ(軽く触る)、フリック(払うように触る)、ドラッグ(押して動かす)、スワイプ(撫でるように動かす)、ピンチ(指でつまむ)と直感的な操作を可能にした。
iPhoneの発売以降、類似コンセプトのスマートフォンは爆発的に増えている。後続して出たスマートフォンOS・Androidを積む機種は、iPhoneと同じくタッチパネル中心のスマートフォンが大半だった。タッチパネル中心のスマートフォンが市場で支配的になる中で、NOKIAは2011年に日本市場から完全に撤退した。
スマートフォンという言葉もiPhoneと共に広まったため、キーボード付きのモバイル端末をスマートフォンと認識していない層もいる。こうして2010年以降のスマートフォン市場の主流は、スマートフォンという言葉の広まりと共に、ひそかに雌雄を決したのだった。
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