寄稿
世界の“奇”ケータイ探訪
携帯電話研究家 山根康宏
2013/5/30  1/2ページ

【第5回】シニア携帯人気の欧州にもスマホの流れ

山根康宏氏 山根康宏氏
携帯電話研究家。1964年、北海道釧路市生まれ。1998年から香港に居住し、アジア及び中国を中心に海外の携帯電話事情を研究している。年間の海外渡航日数は100日以上。著書に『iPhoneが日本に上陸する日』(技術評論社)など。携帯電話コレクターでもあり所有する端末台数は1000台を超える。

世界中に広まるスマートフォン。肌身離さず持ち歩くスマートフォンには、その国の人々の行動やお国柄などといった文化的な背景すら投影される。世界中を飛び回り携帯電話・スマートフォンを見てきた携帯電話研究家の山根康宏氏が、各地で見た特徴的なスマートフォンと、そこから見える国の背景について語ります。

シニア携帯が流行る“高福祉”の欧州

 GSM発祥の地である欧州。多くの国では通信事業者が端末にSIMロック をかけて割引販売を行っており、最新のスマートフォンを無料で入手することも出来る。家電量販店ではSIMフリー端末も売られているが、回線を使い続けるならSIMロック端末を買ったほうがお徳なのだ。海外との往来が激しいビジネスパーソンが現地のSIMを利用できるSIMフリー端末を買う傾向も見られるが、アルバイト程度の所得しかない学生は低価格なプリペイドのSIMロックスマートフォンを購入し、自分の小遣いの中から通信費をやりくりすることも多い。


 欧州の量販店の携帯コーナーも今やスマートフォン一色だ。ところが売り場の一角をのぞいてみると、あまり聞いたことの無いメーカーの特徴的な端末がSIMフリーで何機種か必ず売られるようになっている。それらはスマートフォンに類似した本体サイズであるものの、大型の数字キーを備えたフィーチャーフォンで簡単操作を売りにした低スペックな製品だ。カメラですら備えていない製品が大半だが、ワンプッシュで指定の番号に通話できる緊急発信ボタンはどのモデルも備えている。Eメールやネット接続機能も無いが、毎年製品の数が増えているということはこの「かんたん携帯」に対するニーズが存在しているのだろう。


 欧州のかんたん携帯市場を開拓したのがオーストリアに本社のあるemporiaだ。同社が2006年に発売した「emporiaLife」はスライドボディー式、デザインは欧州雑貨を思わせるスタイリッシュなもので安っぽさは感じられない。これはシニア層であっても持ち物にはこだわりを持ちたい人が多いことや、いかにも年配者向けを意識したようなデザインを避けたいという意図があったのである。出先で電池切れしたときでも乾電池を買って入れれば使えるなど「いつでも必ず使える」という安心を備えた製品でもあった。

2006年に発売されたemporiaLife。メニューボタンが無いなど操作は簡単
2006年に発売されたemporiaLife。メニューボタンが無いなど操作は簡単

 しかもUI(ユーザーインターフェース)はそれまでの携帯電話に無かった大胆なものを採用。メニューボタンは無く、スライドを閉じた状態ではディスプレイに常に電話帳が表示されている。つまり電話をかけたい場合は上下ボタンで相手を選んで発信ボタンを押すだけで済むのである。また電話番号を押したいときはスライドを引き出せば10キーが現れるので数字ボタンを押せばよい。電話帳の登録もメッセージを着信すると相手の電話番号が自動的に保存される。頻繁に連絡を取り合う相手なら何もせずに電話帳が更新されていくわけである。

>>そしてシニア向け製品もスマホへ進化する


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