寄稿
世界の“奇”ケータイ探訪
携帯電話研究家 山根康宏
2013/4/30  1/2ページ

【第4回】世界一のフルキーボードスマートフォン
大国米国

山根康宏氏 山根康宏氏
携帯電話研究家。1964年、北海道釧路市生まれ。1998年から香港に居住し、アジア及び中国を中心に海外の携帯電話事情を研究している。年間の海外渡航日数は100日以上。著書に『iPhoneが日本に上陸する日』(技術評論社)など。携帯電話コレクターでもあり所有する端末台数は1000台を超える。

世界中に広まるスマートフォン。肌身離さず持ち歩くスマートフォンには、その国の人々の行動やお国柄などといった文化的な背景すら投影される。世界中を飛び回り携帯電話・スマートフォンを見てきた携帯電話研究家の山根康宏氏が、各地で見た特徴的なスマートフォンと、そこから見える国の背景について語ります。

タッチパネル全盛のこの時代に…

 スマートフォン全盛時代となり、右も左も誰もが使っている端末はストレートのフルタッチ形状となり、ぱっと見どれも似たような製品も増えている。最近ではディスプレイサイズも大型化が進み、表示されるソフトキーのサイズを大きくしたり、あるいは片手打ちを考えソフトキーを左右に寄せて表示するなど、物理的なキーがなくとも文字入力しやすい工夫が進んでいる。その一方、ブラックベリーに代表されるQWERTYキー*1をもった製品は減ってきており、スマートフォンの入力デバイスはタッチパネルが主力となっていくようだ。


 だがQWERTYキーを備えたフルキーボードスマートフォンの新製品が続々と投入されている国がある。それは途上国や新興国ではなく米国なのだ。米国といえばiPhoneのシェアが過半数に達しており、今では誰もがタッチパネルから文字入力を行っているという印象がある。ニューヨーク・マンハッタンの街中を歩いていてもブラックベリーユーザーを見る機会は大きく減っており、ビジネスパーソンの多くがiPhoneを使っている光景も珍しくない。だが携帯電話事業者の店舗へ立ち寄ってみると、店内には必ずフルキーボードスマートフォンが複数機種展示されているのだ。


 例えば米国の全事業者を取り扱う大手家電量販店、Best Buyのオンライン販売ページをざっと見てみると、フルキーボードスマートフォンの数は常時10機種以上。またフィーチャーフォンのフルキーボードの製品も20機種以上と、その数は他国と比較してもかなり多い。スタイルはブラックベリータイプの縦型、横スライド型、横クラムシェル型など複数あり、フルキーボード端末だけを見ても米国の消費者は様々な好みを持っているようだ。メーカーはサムスン、LG、モトローラ、ブラックベリー、ファーウェイ、ZTEなどの大手だけではなく、アルカテルやパンテックなど多数のメーカーが米国のフルキーボード端末市場に参入している。

サンヨーブランドのInnuendo
サンヨーブランドのInnuendo

 そして日本メーカーも米国ではフルキーボード端末で存在感を高めている。京セラはミッドレンジクラスで買いやすい価格帯のスマートフォンを複数販売しているが、フルキーボードを備えたRiseはスライド機構にガタも無くスムースに動き、各キーも押しやすい。また京セラがサンヨーのブランドで出しているInnuendoはプリペイド向けに2年以上も販売されている人気機種で、閉じるとストレート、開くとフルキーボードが現れるクラムシェルスタイル。閉じた状態の表面はタッチキーとなっており、普段はキーが表示されず光沢のある美しい表面状態となる。日本メーカーらしいデザインにも優れた製品だ。

>>iPhoneが生まれた米国で何故?


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