寄稿
世界の“奇”ケータイ探訪
携帯電話研究家 山根康宏
2013/1/31  1/2ページ

【第1回】「オリジナルを超えた6インチスマホ」
中国の「山寨機」

山根康宏氏 山根康宏氏
携帯電話研究家。1964年、北海道釧路市生まれ。1998年から香港に居住し、アジア及び中国を中心に海外の携帯電話事情を研究している。年間の海外渡航日数は100日以上。著書に『iPhoneが日本に上陸する日』(技術評論社)など。携帯電話コレクターでもあり所有する端末台数は1000台を超える。

世界中に広まるスマートフォン。肌身離さず持ち歩くスマートフォンには、その国の人々の行動やお国柄などといった文化的な背景すら投影される。世界中を飛び回り携帯電話・スマートフォンを見てきた携帯電話研究家の山根康宏氏が、各地で見た特徴的なスマートフォンと、そこから見える国の背景について語ります。

正規メーカーを凌ぐ「山寨機」

 車や家電からIT製品まで、今や世界の工場となった中国。その中でも携帯電話産業はここ数年好調を続けている。中国商務部の発表などによると、2012年の中国の携帯電話輸出台数は初めて10億の大台を超える見通しだという。今や世界で販売されている携帯電話の半数以上が中国製なのだ。そういえばあのiPhoneでさえも実は中国の工場で生産されている。

6インチスマートフォンもあっという間に作り上げてしまう中国の零細メーカー

6インチスマートフォンもあっという間に作り上げてしまう

中国の零細メーカー

 今回はそんな中国から生まれた6インチ大画面のスマートフォンを紹介しよう。メーカー名は不詳、しかし非正規なルートを通じて中国全土で販売されている。しかもデュアルコアCPUを搭載するなどスペックは十分で価格も安い。見た目は大手有名メーカー製品に類似しているものの、どことなくオリジナリティーも感じられる不思議な製品である。中国では今、この手のスマートフォンを製造するメーカーが次々と現れているのだ。


 中国国内で携帯電話関連企業が多数集まるのが広東省の深センだ。深センには携帯電話の心臓とも言えるチップセット、液晶などの部材、そして本体製造のための金型から製品のパッケージまでありとあらゆる工場が集まっている。スーツケースに現金を入れて深センに行けば、数日で携帯電話工場を開くこともできると言わるほどである。


 とはいえ高度なIT製品である携帯電話を一から開発するにはコストと時間がかかるはずだ。携帯電話の新製品の開発には2、3年かかると一般的に言われているが、中国では1ヶ月もかからぬうちに新製品が次々と送り出されているという。この立役者となったのが台湾のMTK社だ。同社は携帯電話の基本モジュール部分をワンチップ化して販売、さらにその上で動くOSを無償提供したことにより、携帯電話が基礎開発ゼロで設計できるようになったのである。つまり市販のパーツをかき集めてボディーだけ作れば携帯電話が出来てしまうというわけだ。


 このように設計・製造の敷居が大きく下がったものの、中国では携帯電話販売にもう1つのネックが存在する。それは製品のネットワーク接続テストを受ける必要があり、政府から認証を受ける必要があるのだ。しかしこの認証テストにはコストがかかることから零細企業はそれを無視し、製造した携帯電話を勝手に販売しはじめた。中央政府に反抗する山賊の意味から、それらの製品は「山寨機」(さんさいき)と呼ばれている。


 中国ではSIMカードと端末が分離されて販売されていることから携帯電話もTVや冷蔵庫などの家電品同等、単体で購入することも一般的である。山寨機メーカーは生産した携帯電話を街中の路地裏などで販売を始め、超低価格を武器に中国国内の正規メーカーの地位を脅かすまでに成長し、山寨機を専門に扱うビルが国内各地に出来上がるほどであった。低所得者などにとって街中で、雑貨感覚で買える山寨機は無くてはならない存在になっていったのである。

>>スマホブームが来ても即対応。「山寨機」の生き残り


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