寄稿
電子書籍の近未来
三田誠広 作家・武蔵野大学教授
2012/11/29  1/2ページ

【第4回】デジタル・ファーストの問題点

三田誠広氏 三田誠広氏
作家・武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長。1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒。1977年、『僕って何』(角川書店)で芥川賞受賞。作品は『いちご同盟』(集英社)『空海』(作品社)など多数。2011年より武蔵野大学教授就任。

キンドルなど電子書籍端末が登場し、その存在に関心が高まっています。デジタル化の流れに対応していく書籍や、そうした環境下での著作権保護の動き、さらには電子書籍の将来について、芥川賞作家で武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長の三田誠広氏に解説していただきました。第4回はデジタル・ファーストの問題点についてです。


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デジタル・ファーストとは?

 これまでは既存の紙の本を電子書籍にするということを前提として話を進めてきた。これからは、紙の本と電子書籍が同時に発行されるようになり、やがては電子書籍が先に出るという時代になるだろう。このように、電子書籍が先に出たり、電子書籍だけが出たりする場合を、ここではデジタル・ファーストと呼んでおこう。


 この場合、紙の本では表現できないような仕組をもった、音楽やアニメと複合したソフトはいちおう除外しておく。たとえば文字情報で展開される物語の中に、ゲームを組み入れたり、つねにバックミュージックが流れたり、イラストや動画が大量についていたり、といったものは、もはやふつうの《書籍》とはいえない、新しいジャンルのコンテンツだといっていいだろう。もともとゲーム機、PCなどで遊ぶロールプレイングゲームの中には、大量の文字情報が入っていたのだし、アニメのコンテンツにオマケで原作またはノベライズした文字情報をつけるといったこともこれからは想定できるだろう。


 これに対して、たとえば《ケータイ小説》と呼ばれるものは、明らかに文字情報を主体としたコンテンツなので、電子書籍と考えていい。これは素人の書き手に呼びかけて、ブログを書くような形で小説や物語を書いてもらい、誰もが無料で読めるようにしたものだ。ブログの場合は、最新の書き込みが先頭に来るので、書いた順と反対に文章が並ぶことになるが、そうならないように、随時、前に書いた文章の続きが書けるようにしたものが、ケータイ小説だといっていい。


 ケータイ小説は本来はネット上だけに存在するものだったのだが、やがて読者の要望から紙の単行本として出版されるようになった。ネットでは無料で読める作品が売れるかどうか、当初は出版社も半信半疑だったようだが、好きな作品は紙の本で何度も読みたいという読者の要望が強く、実際にベストセラーが次々に出ることになった。このように素人の作品が、ネットを通じて多くの読者に読まれ、やがては紙の本として出版されるというのは、ネットと紙の本の共存という点では注目すべき現象だ。

>>“対価”はどうする? 紙の本との決定的な違い


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