寄稿
電子書籍の近未来
三田誠広 作家・武蔵野大学教授
2012/9/24  1/2ページ

【第2回】デジタル画像の問題点

三田誠広氏 三田誠広氏
作家・武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長。1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒。1977年、『僕って何』(角川書店)で芥川賞受賞。作品は『いちご同盟』(集英社)『空海』(作品社)など多数。2011年より武蔵野大学教授就任。

キンドルなど電子書籍端末が登場し、その存在に関心が高まっています。デジタル化の流れに対応していく書籍や、そうした環境下での著作権保護の動き、さらには電子書籍の将来について、芥川賞作家で武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長の三田誠広氏に解説していただきました。第2回はデジタル画像の問題点についてです。

グーグルによる本の画像変換

 既存の紙の本のページを開いてデジカメで写真を撮る。写真の画像は電子データに変換されるから、本1冊ぶんのページをすべて画像化すれば、これでもりっぱな電子書籍だ。いまから3年前の2009年の春、この画像による電子書籍が世界的な大問題に発展した。米国においてグーグルがいくつかの大学図書館や公立図書館の蔵書のすべてのページを画像化し、図書館間の送信だけでなく、一般の利用者にも有料で電子書籍を配信するというサービスを始めることになった。


 実はその前年に米国内では出版社や著作者の団体とグーグルの間に和解が成立しており、一定の使用料を支払うことで合法的に配信事業ができる見通しになっていた。しかし図書館には外国の本も収蔵されているので、米国での和解に参加した米国の作家だけでなく、世界中の作家の本が無断で複製され、放っておくとそのまま配信されるという事態になってしまった。


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蔵書の電子化事業

 実はハーバード大学には日本で出版された書籍の充実したコレクションがあった。日本の著作権法では、図書館の書籍を無断で複製することはできないのだが、米国の著作権法には“フェアユース”という考え方があって、権利者に迷惑をかけなければ無断で複製してもよいというような慣例があった。ただしこれは米国だけの考え方なので、世界中の作家が問題提起し、現在では対象は英語の本だけということになった。従って、日本語の書籍が無断で配信されるおそれはなくなった。


 図書館の蔵書をネット配信によって無料または低価格で読めるというのは、とても魅力的なシステムだ。このグーグル問題が発生した時期に呼応して、日本の国立国会図書館では、蔵書の電子化事業を促進することになった。それまでは著作権の切れたものだけを少しずつアーカイブ(画像による電子化)していたのだが、平成21年度の補正予算で一挙に百億円以上の予算がついて、いまでは1968年までに出版された書籍(雑誌を除く)は電子化を終えている。また今年になってから、民間でも出版デジタル機構という組織ができて、政府からの補助金をもとに、書籍の画像化を推進する態勢が整った。

>>書籍の画像化の問題とは?


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