寄稿
電子書籍の近未来
三田誠広 作家・武蔵野大学教授
2012/8/27  1/2ページ

【第1回】書籍のデジタル化とは何か

三田誠広氏 三田誠広氏
作家・武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長。1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒。1977年、『僕って何』(角川書店)で芥川賞受賞。作品は『いちご同盟』(集英社)『空海』(作品社)など多数。2011年より武蔵野大学教授就任。

キンドルなど電子書籍端末が登場し、その存在に関心が高まっています。デジタル化の流れに対応していく書籍や、そうした環境下での著作権保護の動き、さらには電子書籍の将来について芥川賞作家で武蔵野大学教授・日本文藝家協会副理事長の三田誠広氏に解説していただきました。

電子書籍の登場

 電子書籍という言葉は数年前から耳に入っていた。2年ほど前には「電子書籍元年」などという言葉も聞こえてきたのだが、電子書籍がブームになっているとはとてもいえない状況だ。確かにマンガは、ガラパゴス・ケータイの時代から売れていた。ケータイだとコンテンツを買っても電話代として請求される。クレジットカードをもっていない子どもたちにとっては、ケータイというのは便利なツールだ。

電子書籍専用端末の出荷台数推移・予測(国内)。シンクタンクでは出荷台数が増えていくという予測をしているところが多い(出典:MM総研 2012年7月12日発表のニュースリリース)
電子書籍専用端末の出荷台数推移・予測(国内)。シンクタンクでは出荷台数が増えていくという予測をしているところが多い (出典:MM総研 2012年7月12日発表のニュースリリース)

 米国ではキンドルと呼ばれる端末を始めとして、電子書籍専用の端末が普及している。iPadなどのタブレット型コンピュータでも電子書籍が読める。キンドルを普及させたアマゾンは紙の本も売っているけれども、電子書籍の売り上げが紙の本を上回ったといわれている。だが、日本ではまだそういう状態になっていない。それはなぜなのかということを、数回の連載で考えてみたい。


 電子書籍と呼ばれるものの中には、動画を組み込んだり、ゲームの要素を加味したものがある。こういうハイブリッド型の電子書籍は、もはや「書籍」とは呼べない、新しいジャンルのコンテンツだというべきだろう。出始めた頃のゲーム専用機のロールプレイングゲームでも、文字情報を読むことでゲームが進行していった。文字情報があるからといって、誰もあれを「書籍」とは呼ばなかった。これからは、文字情報とゲームの要素が交錯したり、アニメや音楽とのコラボレーションが盛んになるだろう。とりあえずこうした新しい「書籍」についてはあとで述べるとして、今回は既存の紙の書籍のデジタル化ということについて考えることにする。


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2種類ある書籍のデジタル化

 書籍のデジタル化には2種類の方法がある。これはつまり、電子書籍には2種類あるということだ。紙の本のページを開いて、デジカメで写真を撮る。デジタル画像が保存されるので、これでも立派な電子書籍だ。最近はデジカメの解像度が上がっているので、この画像でも充分に文字情報を読むことができる。作業をオートマチック化したスキャナーという装置も開発されている。自炊代行業者と呼ばれる業者に委託すれば、1 冊の本の全ページを安価にデジタル化(PDFファイル)することができる(ただし非合法である可能性が高い)。


 もう1つの電子書籍は、テキスト文書と呼ばれるものだ。わたしはいまこの原稿をワープロで書いているのだが、ワープロで文書を打ち込むと、文字コードに変換されて、16進法の数字の列ができる。これがさらに2進法の数字に変換されてパソコン内に保存される。そのテキスト文書をメールに貼り付けて送り、いま読者が読まれているような文字情報に戻されてネット上に掲載されているわけだが、このような文字コードに変換された文字情報で構成された電子書籍を、ここではテキスト文書と呼んでおこう。

>>テキスト文書と画像のデジタル化とは?


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