寄稿
コンピュータフォレンジック最前線
橋本 豪 外国法事務弁護士
2012/6/18  1/2ページ

【第5回】サイバースペースにおける法の適用

橋本豪氏 橋本豪氏
外国法事務弁護士。西村あさひ法律事務所所属。1964年生まれ。東京大学法学部卒業。コロンビア大学スクール・オブ・ローにて法律博士号を取得。主な業務分野は国際取引法務、クロスボーダー訴訟など。著書に『クラウド時代の法律事務』(商事法務)など。趣味はエレキギター、チェス。

近年、サイバー攻撃は凶悪化・巧妙化の一途を辿っています。また大阪地検特捜部元検事によるフロッピーディスクの改ざんに代表される、電子情報を扱った犯罪も後を絶ちません。デジタルデータの証跡を追い保全する「コンピュータフォレンジック」と、それらを証拠として認め、開示させる「eディスカバリ(電子的証拠開示)」について、外国法事務弁護士の橋本豪氏に解説していただきます。最終回はサイバースペースにおける法の適用についてです。


RPAツール・AIHH

ルールなき世界?

 最終回である今回は、まとめも兼ねて、現状サイバースペースにおいてルールは存在するのか、そこにおけるセキュリティとはどう考えるべきなのか、ということについて考察してみたい。


 本論においてはこれまで、IT大国である米国の民事訴訟において、民事訴訟規則という手続法の分野で、法律がIT技術をどのように追いかけ対処しようとしてきたかをみてきたが、これまでのところ、法律(家)の側からのIT技術に対する取り組みが必ずしも十分なルールを生み出すまでにいたっていないのではないか、という状況も確認することができた。


 そこで今回は、特定の法分野における現状にとらわれず、よりマクロ的な視点から法とサイバースペースという構図で考えてみたい。これは、ここしばらく、筆者も実務家として業務において格闘していくことになるであろう問題と考えており、そこでの問題意識として、サイバースペースとは“Wild Wild West”なのだろうか、もしそうならどう対処すべきなのだろうか、というものである。


RPAツール・AIHH

サイバースペースは現実空間ではない

 ここで、第1回に立ち返って、もう一度サイバースペースについて考えてみたい。まずそこで考えたのは、realな現実世界とvirtualな仮想空間との違いであった。サイバースペース、すなわち仮想空間は、われわれ人類にとって、つい最近まで経験したことのない空間である。そこでの出来事は、いみじくもvirtualという言葉が表しているように、あくまでコンピュータ上、またはコンピュータネットワーク上のサイバースペースにおけるものとして、人間には認識されてきた。ともすれば我々が、サイバースペースにおける出来事に対処するにあたって、いわば「実感」の欠如したような感覚を味わうのはこれが理由であろう。


 ところが、本論第1回冒頭に述べたとおり、virtualな空間での出来事は既にrealな世界へのフィードバックを起こし始めており、もしもそこで損害が生ずれば、それはrealな世界における損害をも意味し始めている。それに対して、人間が現実感を持ち、ルールを作り上げていく試みはまだ始まったばかりであり、高度に技術的であることがサイバースペースの特性であることともあいまって、現実感を持った対応を困難としているのではないかと筆者は考えている。


 そのため、元来、社会の実状を追いかけ妥当なルールを作り上げていくことが多い法律家の営みが、これまで以上にサイバースペースの実状に遅れるという状況が生じているといえるであろうし、本論においてはその一例として、これまで米国連邦民事訴訟規則を題材に考察してきたわけである。

>>サイバースペースにおける法の適用とは?


RPAツール・AIHH

【関連カテゴリ】

情報セキュリティ