寄稿
デジタルメディアの世界潮流を読み解く
ジョン・キム 慶応大学大学院准教授
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2011/8/8  2/2ページ

【第3回】スマートテレビ普及における4つの課題

複雑化するUI

 3つ目の課題として、「UI(ユーザー・インターフェース)の複雑化」がある。最新のApple TVはリモコンを以前よりシンプルにすることで、利用者の操作上の利便性を向上させたと評価されている。それは多様な機能を犠牲にした側面があることも忘れてはならない。アップル側としてはPCに近付くために欲張った機能を注ぎ込むことは、ユーザーの利便性を阻害する結果を生むと思ったのだろう。一方で、テレビをPCに近付かせたい(=PCで使える機能やサービスをテレビ上でも提供したい)と考えているGoogleの場合は、ソニーのリモコンとLogitech社のキーボードを結合したUIを採用している。多様な機能を提供するために不可避なこの選択が、ユーザーにどう評価されるか未知数ではあるが、UI面での今後の更なる工夫が求められているのは確かである。

QOS担保の問題

 4つ目の課題として、「QOS(Quality Of Service:サービス品質保証)担保」の問題がある。両社のスマートテレビ戦略は高速ネットワーク環境が前提になっている。特に、アップルは以前のダウンロード型からストリーミング型に移行したこともあり、高速で安定したネットワーク環境というのはサービス提供において不可欠な要素である。また今後のスマートテレビ普及は通信トラフィックの爆発的な増大を意味するものでもあり、QOS問題は今後益々その重要性を高めていくと予想される。この問題がややこしいのは、両社が独自で解決できる問題ではなく、通信事業者などネットワークを保有する側の意向、そしてネットワーク保有者の権限の度合いを議論する、いわゆるネットワーク中立性(Network Neutrality)政策の行方にも左右されるところが大きいことだ。

図表2 日本のスマートテレビの利用世帯数
※2010年度は推計値、2011年度以降は予測値
(出典:野村総合研究所ニュースリリースより作成)
図表2 日本のスマートテレビの利用世帯数 ※2010年度は推計値、2011年度以降は予測値 (出典:野村総合研究所ニュースリリースより作成)

 以上述べてきたように、本稿ではスマートテレビが直面している様々な課題について論じてきたが、現段階ではその未来を楽観するのも悲観するのも早い。我々は今まで新しい技術に対し、短期的にはその可能性を過大評価する一方で、その技術が持つ中長期的なインパクトについては過小評価する傾向があった。同様に、現段階では改善の余地の多いスマートテレビではあるが、今後の取り組み次第では大きく躍進していく可能性を秘めているのも事実である。いずれにしてもスマートテレビの今後の更なる進化に注目したい。


―編集後記-
 3回に渡ってお届けしたジョン・キム准教授による「デジタルメディアの世界潮流を読み解く」、いかがだっただろうか? 第1回ではソーシャルメディアの可能性について、第2回・第3回ではスマートテレビの台頭とその課題について解説していただいた。一昔前はメディアといえば、新聞やテレビなど、ごく限られたものしか存在していなかった。しかし、インターネットが普及したことにより、メディアそのものが身近な存在になり、参加型、双方向的なものに変わった。その代表的な例がSNSと言えるだろう。また、Google TVやApple TVのようにアプリのダウンロードなど従来では考えられなかったテレビの概念が新しく誕生している。激変するデジタルメディアの流れに乗り遅れることのないよう、その一挙手一投足をしっかりと見守っていくことが必要であろう。

(編集担当:山下雄太郎)

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