寄稿
デジタルメディアの世界潮流を読み解く
ジョン・キム 慶応大学大学院准教授
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2011/8/8  1/2ページ

【第3回】スマートテレビ普及における4つの課題

ジョン・キム氏 ジョン・キム氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授。1973年韓国生まれ。日本に国費留学。BSフジ「プライムニュース」ブ レインキャスター。今年3月までハーバード大学インターネット社会研究所で在外研究。新著に『逆パノプティコン社会の到来』(Discover 21)。

FacebookやTwitterを中心にデジタルメディアの存在感は増していくばかりです。日本、米国をはじめ、世界のデジタルメディア事情について、ジョン・キム慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授に解説をしていただきます。第3回目(最終回)はスマートテレビが普及するための4つの課題について解説していただきます。

魅力的なコンテンツの確保とは

 前稿で述べたように、AppleもGoogleもPCやスマートフォン市場でのプラットフォーム事業経験を基盤にしてスマートテレビ市場に本格参入している。特に、Google TVはインテルやソニーなどPCや家電産業の有力企業と連携を組んだこともあって、スマートテレビへの期待を高めた。一方で、今後スマートテレビが本格的に軌道へ乗るためには解決を要する課題が山積していることも事実である。以下、その課題を整理してみる。

図表1 世界のスマートテレビの市場規模(出典:H.I.ビジネスパートナーズ予測)
図表1 世界のスマートテレビの市場規模(出典:H.I.ビジネスパートナーズ予測)

 まず1つ目の課題として、「魅力的なコンテンツの確保」という問題がある。魅力的なコンテンツがないとそもそもテレビとしての存在意義を発揮することはできない。魅力的なコンテンツの調達・確保については両社とも苦戦しているが、Google TVの方が問題はより重大である。


 Google TVの場合、You Tubeに加え、放送番組や映画をオンデマンドで提供するNetflixやAmazonと連携しながらコンテンツを提供しているものの、いわゆるアメリカの“4大ネットワーク”といわれるABC、CBS、NBC、FOXといった地上波放送局からのリアルタイムでの番組の提供はまだ受けていない。これは閉鎖モデル(=自己完結モデル)を採用しているアップルに比べ、オープンモデル(=連携モデル)を採用しているGoogleに対し、コンテンツを提供することに著作権者が抵抗を感じることに起因しているように思われる。


 アップルは音楽のネット配信をはじめ、強固なDRM(Digital Rights Management)による著作権の保護や、収益配分により著作権者(コンテンツ保有者)との良好な関係を築いてきた実績がある。そして初期のApple TVとは異なり、最新のApple TVではダウンロード型からストリーミング型に移行したことを受け、コンテンツの違法複製が以前より難しくなったことなど、著作権者からの信頼はGoogleに比べ、強いとされる。


 一方、Googleはその創設から一貫してオープンモデルを採用してきたこともあって、著作権者との対立も絶えなかったのは周知の通りである。そもそも検索エンジン事業自体が後になってフェアユースとして認められたものの、当初は著作権法違反すれすれの事業モデルであり、その後のYou TubeやGoogle Book Searchなど、既存の著作権者からするとかなりの抵抗を感じる事業モデルを次々と世に出してきた経緯がある。何しろ、Googleはその収益の95%以上をアドワーズやアドセンスの2つの収益源から得ており、それはオープンモデルを究極に追求しない限り成立しない収益源でもある。こうしたこともあって、Apple TVがABCやCBSなど一部の地上波放送局との番組供給契約の締結に成功しているのに対し、Google TVはまだどの地上波放送局との番組供給契約にも辿り着いていない状態である。

不可欠なアプリ市場の成長

 2つ目の課題として、「スマートフォン市場の成長を牽引してきたアプリ・ダウンロード・サービスをどれくらい効果的にスマートテレビ市場に移植できるか」、という問題がある。アップルのiPhoneやGoogleのAndroidの躍進の背後には、アプリ市場の成長が不可欠であったのは周知の通りである。


 スマートテレビ市場にも中長期的にはアプリダウンロードが普及されていくと予想されるが、それに対する現段階での両社のスタンスは大きく異なる。つまり、テレビをPCとは差別化された、エンターテインメントに特化した媒体として捉えているアップルは、スマートテレビにおいてアプリ・ダウンロード・サービスを本格展開しようとは現時点では考えていない。一方で、インターネット検索機能を基盤とし、テレビをPC化しようとするGoogleの場合は、当初アンドロイド市場を通じたアプリ・ダウンロード・サービスをGoogle TVの1つの売りにしたものの、現段階ではスマートフォンでダウンロードできるアプリケーションがスマートテレビでは利用できない状態が続いているのが実情である。

>>UIや通信面での課題とは?


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