【第3回】隠れた品質コストを「見える化」する
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伊藤嘉博氏 早稲田大学商学学術院教授 。博士(商学)。1953年生まれ。1981年早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了。成蹊大学、神戸大学大学院教授などを経て2005年より現職。趣味はオールドトイと時計のコレクション、旅行。 |
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景気不安定の中、企業の業績悪化の打開策に有用な品質コストマネジメントについて早稲田大学の伊藤嘉博教授がわかりやすく紹介。最終回は隠れた品質コストの“見える化”や 品質コストの今後の可能性について解説していただきます。
品質管理の第一線の現場では、正確でかつ客観的もしくは検証可能な情報が有用とされる。その意味では、品質コストはある種特殊なタイプの情報といえるかもしれない。何よりも、品質コストを正確に測定することはほぼ不可能であるからだ。とくに、予防コストの把握が困難であることは前回指摘したとおりである。その反面、品質コストには現場の情報ニーズに応えるという役割以上に、品質改善に向けて人々の行動に影響を与えるという重要な任務がある。実際、品質コストの活用目的として多くの企業が真っ先にあげるのは、さらなる品質の改善に向けた注意喚起情報としての役割である。
もちろん、この役割は品質コストに限ったものではないだろうが、利益業績および組織を取り巻く多様なステークホルダーの共通の利害に直結するコスト情報は、そうした性格をより強く有しているといって間違いない。だからこそ、経営者はときに意図的に情報の中身をアレンジし、あるいは情報伝達の仕方を工夫して、組織構成員の行動をより良い方向へと導こうとするのである。
したがって、品質コストは他の品質管理情報とそもそも必要とされる要件が異なるのであり、同時に前述した「影響づけ」情報としての性格をうまく活用することが重要となる。もっとも、日本の品質管理実践では品質コストも他の情報と同一視され、その結果、品質コストは品質管理や品質保証に関連して発生する費用や損失のほんの一部しか反映していないと批判されることもある。
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| 図、隠れた品質コストの例 |
こうした測定や集計そのものが困難な品質コストは「隠れた品質コスト」(hidden quality cost)とよばれ、その見える化はシックスシグマ*の実践場面などにおいても、最重要の課題のひとつと位置づけられている。
隠れた品質コストは、図に示すように、しばしば氷山にたとえられる。言うまでもなく、水面下にあるものがこれに当たるが、なかでも品質不良によってブランドイメージが棄損し、将来発生が見込まれる利益の減少額(逸失利益)がもっとも深刻なものといえよう。というのも、この種の機会損失を正しく予測ないし見積ることは困難というよりもほぼ不可能であるため、通常は品質管理の対象外とされてきたからである。シックスシグマにおいても、基本的にはこの状況は変わらない。
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