会計コラム(連載:第1回)「内部統制プロジェクトチームの疲弊」: コラム : ハミングヘッズ

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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

公認会計士
松澤大之・著
「捨てる技術で能率アップ
リングノートで
ムダな勉強をやめなさい」
(徳間書店)


公認会計士 松澤大之
会計コラム
監査現場の会計士の視点から、内部統制や会計についてお届けします。

第1回 テーマ 「内部統制プロジェクトチームの疲弊」

膨大な量のマニュアル作成、各種システムの改修など、
内部統制対策で疲弊する企業の現場の実態とは

 金融商品取引法にもとづく内部統制報告書の提出が、2009年3月期の決算から義務付けられ、各企業は試行錯誤を重ねながらも一通りの整備が終わったとされるこの時期。その対応コストの平均は1億6000万円(日本総合研究所調べ)という統計もあります。しかし各企業の内部統制対策チームは、その準備に追われて疲弊し、現場では制度自体への疑問の声も絶えないという現状もあるようです。

J-SOX対応コスト平均
(クリックすると拡大します)
 企業の内部統制プロジェクトチーム―その仕組みを作り、評価運用を行っている部門の人達―は、手間ヒマがかかる資料作成などの作業にうんざりしているという現状も多いのではないかと思います。
 その最たる原因として、内部統制には「定量的な判断数値」がないことが挙げられます。そのため対応策自体がゴールの見えないレースになり、うんざりしてしまうんですね。仕事において、行きつく先が見えない作業ほど嫌なものはありません。一応基準をクリアする目安として、業務データからランダムに抽出した25件のサンプルをチェックするといったものがあるのですが、非常に判断しづらいようです。

 なぜなら企業のリスクというのは、「これをやればすべて安心」ということがないため、企業は不安感からいくらでもリスク対策の範囲を広げてしまいます。例えば「外出したら交通事故に遭うかもしれない。道を歩いて植木鉢が落ちてくるかもしれない」ということまで恐れていたら、日常生活を営めないというのは誰でも分かりますが、企業リスクとなると考えすぎてしまうのですね。結果、いたずらに手間とコストが増えてしまい、皆その作業に疲れてしまう。さらに言うなら、監査法人等の内部統制をチェックする側も、どこまでの範囲を企業リスクと捉えるのか線引きにとまどってしまい、結果、企業側へのアドバイスもしづらいという実情もあるようです。

過剰なリスク対策はゴールの見えない作業を生み、現場は疲弊してしまう

内部統制対応が、企業価値の向上につながっているか
 しかし、それだけ一生懸命に対応した内部統制であるにもかかわらず、約半分の企業が企業価値向上につながっていないと回答した統計もあるのです(右図参照)。

 では、どうすればより良い内部統制を構築できるのか。
 そもそも内部統制で求められるのは「企業が業務の透明性を保つことを通じ、不正やミスを予防・発見するための仕組み」だと私は考えています。つまり「どのような業務を行うべきか」また「どのような業務を行ったか」を誰が見ても分かるようにすることで、企業の健全性を保つ、そのためのルールであると思うのです。そして会社とは人の集合体ですから、本来は一定のルールを作って活動していくことが会社にとっても、働く従業員にとってもメリットは高いはずです。

 内部統制の実施基準の設定についての意見書には下記のようにあります。

「財務報告の信頼性との関係からみると、経営者は、自社のすべての活動及び社内のすべての従業員等の行動を把握することは困難であり、それに代わって、経営者は企業内に有効な内部統制のシステムを整備・運用することにより、財務報告における記載内容の適正性を担保することとなる。」

出所:財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係わる内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)より抜粋

 このように、制度としての内部統制は、経営者の目が行き届かない従業員数を想定しているようですが、例えば家族経営の八百屋さんに内部統制がないかというとそんなことはない。そして、実はこれをイメージした方が、内部統制の真意を理解しやすいのではないかと思います。
 なぜなら大将のお父さんの目が届く範囲で皆が仕事をしているので、不効率なことをすれば「何をやってるんだ!」となり、不正を働こうとしても同じです。つまり少人数で家族のように精神的な繋がりがある職場では、お父さんという「強力な内部統制」が有効に機能しているので、明文化してルールにする必要性は低いのです。

 ところが大企業になると、人数が増え、育った環境も違う人々が集まり、皆が何を考えているか分からないといった状況では、当然社長一人の牽制では効かなくなります。そうなると業務が不効率になり、ミスも増え、さらに不正を働く従業員も出てくるようになるかもしれません。ですからどうしても、ある程度のルールと、そのルールを守って仕事をする仕組みが必要になってくる。これが内部統制です。

 このシンプルな視点に立ち返れば、内部統制の本来の形がイメージできてくるのではないのかと思います。次回は、その本来の姿から内部統制のあり方を考えます。

家族経営の八百屋さんでは「お父さんの一喝」で内部統制が完了

(コラム掲載日:2009年5月29日)

<会計コラム連載>

第1回「内部統制プロジェクトチームの疲弊」 
膨大な量のマニュアル作成、各種システムの改修など、内部統制対策で疲弊する企業と問題点とは。

第2回「内部統制で変革すべきは“個人の意識”」 (動画あり)
従業員の感情や行動など“個人の意識”こそ、内部統制の有効性を示す大きなバロメータに。

第3回「シンプルで明快な内部統制に向けて」
内部統制報告書、初年度の提出を終え、今、考えるべきは“自社規定ルールは本当に機能しているか”

第4回「内部統制におけるITの役割」
PC操作が日常化した企業環境において、ITによる内部統制の守備範囲は、“業務システム”だけではないはず。

公認会計士 松澤大之

プロフィール:

松澤大之(まつざわひろゆき)

公認会計士。日本公認会計士協会東京会 監査委員会委員。大手監査法人勤務を経て、現在ハミングヘッズ経理財務担当部長。趣味はサッカーで、地元チームに所属。

 


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