防犯カメラの威力 犯罪を抑止するその機能(1)
防犯カメラ(監視カメラ)の活用が広がっている。カメラ映像の活用がそのまま事件解決につながったという事例も着実に増えてきている。裁判員裁判も行われている今、客観的に示す資料に防犯カメラの情報は重要な資料となるという背景もある。光補正機能など、高性能化も進んでいる。その傾向はどうなのか? 警視庁、メーカーなどにお話を伺った。
警視庁が活用する防犯カメラ
実際、設置した際に、防犯カメラはどの程度役に立っているのだろうか? 下の表をご覧いただきたい。これは警視庁が設置する防犯カメラにつき、映像データの提供件数と活用件数(実際に事件等の解決に活用された件数)の推移を表したもの。2002年に歌舞伎町地区に設置した当初は提供件数が57、活用件数が27だったものが、2013年には提供数113、提供件数の数が78と、ほぼ倍増しているのがわかる。
警視庁生活安全部生活総務課の齋藤和宏氏は「防犯カメラを過信するのは禁物だが、犯罪の抑止解析に役に立っている」と説明する。警視庁では、「安全・安心まちづくり」のため、歌舞伎町などの主要繁華街に計195台の防犯カメラを設置・運用しているほか、自治体や商店街などが設置する防犯カメラの設置計画や設置場所の把握を行っているという状況だ。
警視庁生活安全部生活総務課 齋藤和宏氏 |
なお、商店街などが防犯カメラを設置しようとする場合、費用の捻出方法が大きな課題となるが、都内については東京都が補助金を出しているほか、港区や杉並区など独自に設置費用の大半を補助する自治体も目立ってきているという。ただ、東京都の補助金については他のカメラと撮影範囲が重なる場合、補助金の交付対象から除外されるとのこと。そのため、警視庁では適正な設置場所となるようアドバイスを行っている。
ソニーの販売する防犯カメラ
近年は、防犯カメラ自体の高性能化についても目を見張るものがある。特に「解像度」はかなり性能が高まっている。もともと民生用のカメラの技術で定評があったソニーではハイデフィニッション(HD)などの技術を防犯カメラにも応用してきた。
ソニーの発売する360度旋回型カメラSNC-WR632。 旋回型カメラの需要が増えているという |
傾向としては、旋回型のものが増えている。最近では、銀行の店舗や駅のプラットフォームなどに防犯カメラを設置する機会も多い。さらに逆光補正などの機能も充実してきており、例えば直射日光にあたる部分と、暗くなると陰になる部分を判断することで、様々なところで補正ができる仕組みになっている。
導入に関しては「最近は大都市だけではなくて、中、小の都市でも、導入が始まっている」とソニー プロフェッショナルソリューション事業本部マーケティング部統括部長の平野喜一氏は語る。
海外に目を向けると、例えば米国では各学区内に学校が10~20ほど存在しており、1つの学区で2万台ほど導入されているところもある。この学区では防犯カメラが非常に広域に設置してあり、州の半分をもカバーする規模だ。このカメラはネットワークにつながれており、中央の監視センターでその状況がリアルタイムで確認できるなど強固な基盤をもっている。
強固な基盤をもつのは「テロ」をどれだけ防ぐことができるかが、国際社会で大切な要素になっているからだ。大きな犯罪が発生した際、いかに犯人を特定し、見つけられるかというところが一番のポイントとなる。そこで防犯カメラで幅広く撮影しておき、あとで犯人を割り出そうというわけだ。
このように防犯カメラの高性能化は必然の流れ。ソニーでは解像度の幅を今後広げていく。2015年には4Kのラインナップを発売する予定だ。「4Kにすることで、撮影できる範囲が広がるし、撮れる範囲が広がる。様々な機能との調整となるが、そこはなんとかして解像度を上げていきたい」と平野氏。情報量が増えることで、犯罪の抑止につながるのを大きく期待している。
ただ4Kなどで解像度が高くなることによって、その分容量も必要となる印象だが、平野氏は「全てを4Kで記録しなければならないことはない」という見解を示す。場合によってはVGAで記録するなどの運用を行う手法もある。全体の情報量をうまく制御して記録することもできるということだ。
同社は、「Cシリーズ」のように防犯カメラの小型化を売りにした製品も発売。5万円~10万円で小規模のオフィスにも使えるものも販売していくという。
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