ナノテク最先端施設、民間企業の活用術(2)
ヘアカラーやブリーチ剤も恩恵を受ける?
それでは、ナノテクノロジープラットフォームに加わっている研究施設を利用して、一体何ができるのだろうか。
まず、ミクロ世界がどんな構造をしているかを解析する「微細構造解析プラットフォーム」。巨大な電子顕微鏡で、1兆分の1メートル規模の極めて小さなものを見ることができるが、そんなに小さなものを見て何ができるのか? この分野を担当する竹口雅樹氏によると「磁気構造を調べることでより高性能なハードディスクドライブが生まれる可能性もあります」という。
他にも、IBMチューリッヒ研究所と東北大学が、共同で東京大学にある施設を利用した結果、セラミックスの電導率が酸素の濃度で変わることを発見した。セラミックスは陶器のみならず電子部品にも使われている。この研究成果は、より高性能な精密機器の製造にも光が見えた形だ。
![]() |
| 電子顕微鏡で観察するためのスライス作業。 スタッフが基本的なところから丁寧に教えてくれる |
こうした事例を挙げると、構造解析はいかにも「最先端研究をしている人が使うモノ」というイメージだが、実は「髪染め液(ヘアカラー)」や「ブリーチ(脱色)剤」にもこの研究が活かされているのだ。「髪の毛を回転させながら3D構造を取得し、メラニン色素の解析を行います。これによって、髪染めならばメラニン色素が増えやすい素材の開発、ブリーチならばメラニンが抜けやすい素材の開発につながるのです。」(竹口氏)。一見当たり前のことだが、それまで「手探り」で行われていた製品開発も、原子レベルの観察によって品質が向上しているのである。
超小型、でも放送用に使えるマイク開発
続いて「微細加工プラットフォーム」。文字通りナノサイズの細かい加工が可能で、私たちが普段利用している道具でも活用されている。「利用したい」という企業ユーザも多い分野である。スマートフォンの位置や傾きを把握する「ジャイロセンサー」という機器も、ナノレベルでの加工が役立っている。
極薄のシリコンを使ったボールペンサイズのマイクロホンも、NHK放送技研と東北大学の共同開発で生まれた。この大きさで20kHzという、放送レベルに耐える広範囲の音声を拾えるという。
他にも、分子と分子をくっつける「分子・物質合成プラットフォーム」では、直径1nmのサッカーボール型の分子を持つカーボンの中にリチウムを入れて、より丈夫なリチウムイオン電池の研究などが取り組まれている。
色々と「お得」なナノテク利用
こうしたナノレベルの世界の制御が可能になることで、上記以外にも医薬品、化粧品など、様々な分野への応用が見えてくる。
最近では企業側もナノテクノロジープラットフォームの利便性に気付いている。「企業からしてみれば、開発段階の分析などは大学の施設や、施設に精通した研究者が使えるわけです。そして、開発した新製品の量産化の目途がついたら、自社等の工場ラインで生産すれば、研究から販売までの効率が向上しますから」(竹口氏)。
「立っているものは親でも使う」ではないが、中小企業が世界で生き残るためにも、最先端の施設を、知識ゼロから使えるようになる仕組みを、みすみす見逃す手はない。自分の携わる仕事に「ナノの力」が使えるかどうか、今一度見直してみるいい機会である。
HH News & Reports 関連おすすめ記事
ナノテクノロジーを駆使したがん研究の最先端とは?(2014/9/29)ナノテクノロジープラットフォームが出展した展示会の様子(2014/5/22)
つくば市の学術環境を教育にリターンする、市長の政策(2014/5/12)
過去のクローズアップ
天気予報とIT技術(2014/6/23)ビッグデータ、本当の使いどころは?(2014/5/19)
災害時に役立つロボット技術(2014/4/24)
ウェアラブルデバイスの可能性(2014/3/20)
スマホ料金・ネット料金を徹底調査(2014/3/3)
効率化が求められるデジタル・フォレンジック(2014/2/6)
【関連カテゴリ】
IT政策

