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2014/4/24  2/2ページ

災害時に役立つロボット技術(2)

 一方、蛇型ロボットの応用として阪神大震災をきっかけに開発されたのが「蒼龍」だ。全体がクローラーでカバーされており、蛇型ロボットより推進力が高いことが特長だ。2004年の中越地震では、被災地の山古志村で倒壊家屋の中を進むなど、実地における研究も行っている。


 こうした細身のボディで無人で動き、狭い場所を難なく進むことができるロボットならば、人間の進入が困難な福島第一原発の調査にも適任だ。しかし、ラジオコントロール(無線操作)では、放射線が飛び交う原発の内部で通信が途絶えてしまうため、有線を用いなくてはいけない。広瀬氏はこうした課題の克服に向けて現在、準備を進めている。

広瀬氏が開発した蛇型ロボット   蛇型ロボットの発展型ロボットの「蒼龍」
広瀬氏が開発した蛇型ロボット   蛇型ロボットの発展型ロボットの「蒼龍」

重たいものを運ぶパワードスーツ


 これら細身のロボットの他にも、災害現場で重たい物を人の手で運ぶために、筋肉の動きをサポート・強化する「パワードスーツ」の活用が望まれている。パナソニックの子会社・アクティブリンクが開発したパワードスーツ「パワーローダー」は、人間の筋力を超える力を引き出すことができる。

アクティブリンクが開発する
パワードスーツ「パワーローダー」
(出典:アクティブリンク)
アクティブリンクが開発する パワードスーツ「パワーローダー」
(出典:アクティブリンク)

 アクティブリンク社長の藤本弘道氏は、パワードスーツの開発には「作業現場の高齢化」があったという。「工場などの作業現場は重労働で、若手が定着しにくい。その上、高齢化が進んでいる。この流れを変えたかった」(藤本氏)。また500キロを超える荷物を扱う現場ではフォークリフトなどの機械が使えるものの、500キロ未満の荷物を扱う現場では作業に適した機械がないという状況もあった。その不便を解消する機械をつくるために研究を行ってきたという。


 藤本氏は「パワードスーツの製作は、瓦礫などから人を助けるような『災害救助』も想定しているが、災害救助に特化した専用機をつくることはしていない」と話す。パワードスーツを世界中に普及させるためには、汎用的なものをつくり、まずはそれを広めるのが先決というわけだ。


 そこで同社が開発を進めているのが、パワーローダーの汎用版「パワーローダーライト」。同製品は30キロ程度の重量物を難なく持ち上げることができ、価格も1着50万円程度に抑えたもの。2015年に1000台程度まで量産すること目指すとしている。


 パワードスーツについては東日本大震災以降注目度が上がっているものの「まずは身近にある存在にしていくことが大切」と藤本氏。現在、消防庁が管轄する消防研究センターと研究を行いながら、まずは物流・工場の作業現場で使ってもらえるように開発を進めている段階だ。


災害ロボット 普及への課題


 こうした国内の動きに対し、海外でも動きは活発だ。米国では、東日本大震災をきっかけとして、災害ロボットのコンテストが開かれている。2013年12月に米国フロリダ州で行われた大会にはマサチューセッツ工科大学(MIT)や米航空宇宙局(NASA)などが参加。ここで注目された東大発のロボットベンチャー「SHAFT」(シャフト)がGoogleに買収されている。このように災害ロボットについては、米国の巨大IT企業も大きな関心を寄せている。


 海外の企業が日本の災害ロボットに着目する一方で、国内の研究開発は容易ではない。災害ロボットを取り巻く日本の環境について広瀬氏は「ニーズは昔からあるものの、それをとりまく状況は日米では差がある」と指摘する。米国では、テロを見据えた軍需産業として、ロボット開発が活発だ。そのため、災害を迎えるにあたっての準備や環境も整っているという。かたや日本では、そうした危機に対する意識や準備に、米国と開きがある。この状況を少しでも打開しない限り、国内の災害ロボット技術がシャフトのように海外に流出してしまう可能性は否定できないだろう。


 災害ロボットは、震災で大きな被害を受けた日本だからこそ、これからも大切にすべき貴重な技術だ。しかし災害ロボットを取り巻く国内の環境の改善が望まれる。国内の災害ロボット技術は海外の企業も注目しており、今後も目が離せない技術であることは間違いない。

(山下雄太郎)

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