最新のトピックスにフォーカス! クローズアップ
2014/2/6  2/2ページ

効率化が求められるデジタル・フォレンジック(2)

 米国では民事訴訟の際、裁判所が原告や被告に対し、それぞれの主張に関連する情報書類を要求する。十数年前は何十箱という紙の資料が関係者から送られていた。しかし、ここ近年では裁判で使われる証拠書類は、e-mailやpdfファイルをはじめ、電子化して管理されたものが主流となっており、eディスカバリが裁判の判決の行方を左右している。


 米国では民事訴訟が決まった時点で、関係者に対して関連文書の保全をする義務が発生する。仮に関係者が証拠資料のデータを破棄したとしても、フォレンジック技術によって高い確率で資料を復活できるという。そのため、「データの破棄が司法妨害とみなされ、多額の罰金が科されてしまう」(藤氏)とのことだ。

弁護士 藤かえで氏
弁護士 藤かえで氏

 電子的証拠ではSNS(ソーシャルメディア)などの書き込みも捜査の重要な手がかりとなる。例えばある社員が重要なM&Aの案件に携わっているとする。交渉先の企業がある街に来たことをSNSに書き込めば、どういう案件を社員が担当しているかわかってしまう。そのため企業はSNSによって機密情報が漏れることについても十分意識する必要がある。


 また、米国の民事訴訟の近年の傾向として「モデルオーダー」が採用されるケースが増えてきている。モデルオーダーとは、効率のよい司法手続きのため、裁判所が限定的な証拠の開示を当事者に求め、争点を絞ろうとする取り組み。電子メールのデータ提出を要求される証拠保持者(カストディアン)の人数制限などがそれにあたる。


 このモデルオーダーをはじめ、米国では民事訴訟における「プロセスの効率化」を目指す動きが顕著だ。米国司法省もデジタル・フォレンジックのような科学技術が、捜査や分析プロセスを変化させているのを十分認識しているとのこと。藤氏はさらに「企業が調査プロセスを迅速化する分析ツールをどのように活用し、情報を提出するかについて、米国司法省が高い関心を寄せている」と指摘している。


調査の現場でも効率性を重視


 「効率化」の流れは米国における民事訴訟だけに留まらない。デジタル・フォレンジックが活用される日本の調査現場でも、膨大なログに対していち早く重要な情報を見つけようとする試みが行われている。


 シンポジウムでは効率的なフォレンジック技術についても触れられていた。UBIC テクノロジー部 部長の武田秀樹氏が紹介したのはプレディクティブ・コーディング。「予測=Predictive」して「仕分ける=Coding」という意味だ。これはeディスカバリから発展してきた技術で、デジタル文書の中のテキストについて、機械が自動的に証拠に関連するものや調査したいものを振り分けるという技術。これまでは人間が単独で行ってきたが、コンピュータを使って仕分けることで、調査のスピードを高めようという取り組みだ。

UBIC テクノロジー部 部長 武田秀樹氏
UBIC テクノロジー部 部長 武田秀樹氏

 この技術が必要になってきた背景に、武田氏は調査対象者1人当たりのデータ量がここ2、3年で増加している点を挙げている。フォレンジック企業は調査に許される時間が限られるなかで、効率的に文章を見つけなければならない。そこで同技術が迅速な調査に役立つというわけだ。


 プレディクティブ・コーディングでは、電子メールに限らず、様々なテキストデータを調査できるのが特長。武田氏は同社のプレディクティブ・コーディングがアジア言語に対応し、重要なキーワードを拾い上げることで、より高性能になっていると説明。今後の展開として、多くの膨大なデータからより効率的に重要な文章を取り出せるよう、業界の専門知識や統計学の知識を人工知能に学習させることで、より精度を高めていきたいとしている。


 また、サイバーディフェンス研究所の杉山一郎氏も、「顧客に呼ばれてインシデントの解析を行う時間は限られている」とし、デジタル・フォレンジックの効率化に同調する。杉山氏は「インシデントに関係する端末にあるデータの完全コピーを取得できるのであれば、取得するのにこしたことはない」としながらも「関係する端末すべての完璧な履歴を手に入れるのは、現実として難しい」と持論を展開。早急な原因解明や、侵入経路の追及を行うため最低限のデータを解析するFast Forensic(ファスト・フォレンジック)の必要性を訴えていた。


 1人1人のデータ量が膨大となるなかで、デジタル・フォレンジックも効率性が求められている。「ビッグデータ時代」が到来している今日、訴訟や調査で“迅速で正確な”デジタル・フォレンジックをどれだけ活用できるかが焦点となる。

(山下雄太郎)

【関連カテゴリ】

情報セキュリティ