虚偽表示と品質コスト(2)
サービス品質の3要素
隠れた品質コストを最小にするためには何が必要なのだろうか。まずは製品の場合と同様、「Quality」の作りこみが大切だ。ただし伊藤氏は、サービスの品質(servitality)は、製品の品質よりずっと複雑で、「Quality=品質」のほかに「Hospitality=おもてなし」「Amenity=おまけや特典」という3つの要素があると説明する。
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| サービス品質の3要素 |
サービス業では、メーカー以上にQualityを高めることに十分に投資しなければならない。Qualityが固まらないうちに、Hospitalityを追及すれば、必ず無理が生じる。例えば、サービス業にとって、最大の資源は「人」。しかし、実際は無理な残業を強要したり、賃金をカットするケースが目立つ。「人」へのコストを渋ることでQualityを下げてしまっては、「人の質」=Qualityが発揮する「接客の質」=Hospitalityが上がるはずはない。
「よいQualityをつくりこみ、よいHospitalityを生み出せば、自然と顧客が定着し、口コミなどで広まる。一方、広告費をいくらかけても品質は良くならない。『顧客へのアピールにお金を使い、見えないところはごまかす』というのは本当のHospitalityとは違う」(伊藤氏)というわけだ。
QualityやHospitalityの他にも、「クーポンをくばる」「値引きをする」など様々なAmenityも存在するが、あくまで補足的な立場であり、重要なのは前者の2つ。しっかりと作りこむことで、自然と顧客の評価が高まり、リピーターを増やすこともできる。
日本人本来の気質を活かしてホスピタリティを追求
サービス業においては、メーカー以上にQualityが重要な立ち位置を占めていることがわかった。加えて伊藤氏は「日本人の持つ本来の気質を活かすことで、ごまかしではなく、本物のホスピタリティを世界にアピールすることができる」と強調する。
例えば、近年フランスでの日本人シェフの活躍には目を見張るものがある。実際、フランスのレストラン業界は今や日本人なしでは立ち行かなくなっている。それは日本人がフランス人にはない「旺盛な探求心」をもち、盛り付けや素材選びなどの場面で細かい気配りを発揮したことが、フランス人の共感を呼び、ホスピタリティを高めることができたからだ。日本人の持つ気質により高められたQualityやHospitalityが、世界で最も美食といわれるフランスにおいても十分に通じたことがわかる。
また石川県七尾市にある名旅館「加賀屋」でも、あらゆる場面で細かい気配りを欠かさない一方で、「顧客にそれを気づいてもらわなくてよい」という。伊藤氏は「顧客の気づかないところで、親身になって様々なことに気を配る。本来のHospitality=おもてなしとはそういうもの」と説明する。「顧客の身になって考える」というのもまさに日本人特有の気質。こうした特徴を活かしたサービスを追求していけば、顧客の評価も高められるだろう。顧客の気づかないところで手を抜くなどは愚の骨頂だ。
同じ過ちを繰り返さないために
それでは、一連の事件を未然に防ぎ、さらなるサービスの向上を目指すためにはどうすればよいだろうか? 伊藤氏は「まずは現在のサービスレベルによってどれだけ隠れた品質コストが発生しているかを見積もるのが重要」と話す。隠れた品質コストは、自社および自社と類似のサービスを顧客がそれぞれどのくらいの頻度で利用し、一回あたり平均いくら支払うかさえ掴めれば簡単に推定することができる。このデータを活用すれば、サービスの改善によってどれだけ業績の向上が見込まれるかを知ることができるから、サービスの質を落とすなどとは考えなくなるはずだ。
そして、同じ過ちを繰り返さないためにも、サービスのQualityを高めることに注力すべきだ。「常日ごろから、品質コストマネジメントを意識した経営をすることで、地道に改善する努力を怠らないでほしい」と話す伊藤氏。日本人のもつ本来の気質を活かしてQualityを作り込み、よいサービスを追求する。さらに顧客の身になってそのサービスのあり方を改善していけば、顧客の評価が高まり、収益に結びつけられるはずだ。
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