最新のトピックスにフォーカス! クローズアップ
2014/1/6  1/2ページ

虚偽表示と品質コスト(1)

阪神阪急ホテルズやリッツカールトン大阪など虚偽表示が相次いだ2013年。早稲田大学商学学術院教授・伊藤嘉博氏に品質コストと虚偽表示の関係、同じ過ちを繰り返さないために何が必要かを伺った。

相次いだ食品虚偽表示


 2013年後半、ホテル業界で起きた虚偽表示が話題になった。阪急阪神ホテルズは直営ホテルなどで「芝エビ」と表示しながら、実際にはバナエイエビを使用。さらに「九条ねぎ」と表示しながら、青ネギや白ネギを使っていたのを公表している。さらにリッツカールトン大阪では、「フレッシュジュース」と表示しながら、実際は容器入りのジュースを提供していた。その他にもホテルオークラもグループの13ホテルなどでメニューと異なるエビや牛肉などの食材を利用していたと発表。世間に衝撃を与えた。


 こうした食品の虚偽表示はどうして起こってしまうのだろうか? HH News & Reportsの寄稿「よくわかる品質コスト」などでおなじみの早稲田大学商学学術院教授の伊藤嘉博氏はこの事件について「一言でいうと懲りない印象」と語る。以前にも、船場吉兆や不二家など、同様の事件が起きているにも関わらず起きているからだ。伊藤氏が「懲りない」と言った背景には、経営者の意識のなかに間違った認識があるためとしている。

早稲田大学商学学術院教授 伊藤嘉博氏
早稲田大学商学学術院教授 伊藤嘉博氏

 サービスを良くするためにはコストがかかる。そのためコストを削ろうとするとサービスの質も落ちざるを得ない。経営者は常にサービスとコストのトレードオフの関係に悩んでいる。しかし、今回の件では「顧客に発見されなければいい」という意識が働き、表示している食材を使わずに安価な食材を使うという安易な「コストカット」に走った。


 品質を維持・改善するためのコストのことを品質コストと呼ぶ。そして、伊藤氏は適切な品質コストを管理する手法として「品質コストマネジメント」を提唱している。品質コストマネジメントは「顧客にとって価値を有する部分には重点的にコストを投ずる一方で、価値をもたらさない部分コストは大胆に削減する」のがキモだ。


隠れた品質コストを軽んじた代償


 では、品質コストマネジメントに照らし合わせて一連の事件を分析するとどこに問題点があったのか。品質コストには様々な分類があるが、その一つに品質不良などによってブランドイメージが棄損した結果、様々な営業機会を喪失することを意味するものがある。こうした品質コストは、一般的な製造過程で見込まれる損失や費用などを比べて、予測が非常に難しいため「隠れた品質コスト」と呼ばれることもある。


 一連の事件では「隠れた品質コスト」を軽んじたことが、大きな損失につながったと伊藤氏は解説する。「ブランドイメージ」、すなわち元の「評判」が高ければ高いほど、イメージを棄損した際の損失も大きいものとなる。虚偽表示をしたことで、株主などステイクホルダーへの打撃も深刻なものになってしまう。


 「経営者にはサービスの質を上げたい一方でコストを下げたいというジレンマが常にある。そのジレンマをどう解決していくか。そこに経営者の手腕が問われる」と伊藤氏。


 経営者は長期的な視点で品質コストマネジメントに着手することが大切だ。時間はかかるが品質を良くすれば必ず顧客は増え、収益は増大する。他方、品質管理を怠れば、必ずしっぺ返しがくる。短期的な目線で安易にコストカットを行うと「隠れた品質コスト」に足をすくわれるはめになる。一連の事件のように虚偽表示をすることでブランドイメージを損なえば、どれだけの影響があるか経営者が事前に自覚していればこうした事件は起きなかったはずだ。


 サービスという目に見えない商品だけに、品質を改善しても顧客にそれを認知してもらうのは容易ではない。だからこそ、伊藤氏は「品質に対する顧客の信頼を傷つけることは断じてしてはならない」とし、今回の事件に警鐘を鳴らしている。


 また伊藤氏は「事件を起こした日本のホテルのブランドイメージの低下した結果、ひいては東京五輪誘致で注目されたおもてなしの精神にまで疑問の目が向けられた場合、日本全体が負うコストはどれほどのものか」と問題点の大きさを指摘している。

>>サービス品質の3つの要素とは?


RPAツール・AIHH

【関連カテゴリ】

経営改善