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2013/10/15  2/2ページ

荒川区・全小中学校タブレット導入のゆくえ(2)

 荒川区の試験導入では、タブレットPCが教室以外でも使えるようにしている。教室内だけに無線LANが届くようにしていた総務省のデジタル教科書実証実験『フューチャースクール事業』よりも、使い方に柔軟性を持たせている。

タブレットPC自体の操作はお手の物 提供:荒川区教育委員会
タブレットPC自体の操作はお手の物 提供:荒川区教育委員会

 子どもたちの反応はどうだろうか。荒川区教育委員会の菅原千保子指導主事は、9月から始まったタブレットPCを利用した授業の視察をしている。「教師が教えなくても、手を勝手に動かして手書き入力の機能を探し出すなど、デジタルネイティブらしい様子が見られました」。


 子どもたちがタブレットに書いたものが、先生の手元や電子黒板の画面に出力することもできるので、友達のやり方を参考に自分で努力する、という姿勢も見られたという。「タブレットで書いたことが電子黒板で全員が見られる環境。子どもたちがお互いの考え方を共有できるなど、教科をまたいだ使い方ができるな、と感じています。これから実践を積み重ねていくことになります」(駒崎氏)。


コスト、データ管理、そして…


 試験導入されているタブレットPCは「コンバーチブル型」と言われる、取り外し可能なキーボードが付いているもの。「ローマ字を習うのが小学校3年生からなので、小学校1、2年生はタブレットだけ使えるように」(駒崎氏)と考えての導入だ。OSについては、現在社会で使われている主流のもの、ということでWindows搭載の機種が選ばれた。


導入コストをいかに圧縮するかが課題 提供:荒川区教育委員会
導入コストをいかに圧縮するかが課題
提供:荒川区教育委員会

 さて、コストである。2014年度からタブレットPCの全校配布を予定している荒川区だが、区内の学校をつなぐLANなどの維持も含めると、大規模なものにならざるを得ない。大阪市や佐賀県でも公立校へのタブレットPC導入でハードルとなっているのは、ともすれば「1校1億円」と言われる導入コストである。


 しかし、導入する自治体側もコストカットに取り組んでいる。荒川区の場合、端末の価格交渉はもちろん、サーバ側の作りこみも担っている。タブレットPC導入によって、情報量はデジタル教科書自体のデータだけでなく、ドリルなどで子どもたちが取り組んだ学習データも蓄積されていくので、膨大なものになる。


 これを全て自前のサーバに保存するのは現実的ではない。「学校側はアカウントだけ作成し、教科書データそのものは教科書会社のサーバからの利用、ということを検討していきたい」(駒崎氏)。ゆくゆくは蓄積された子どもたちの学習データから、「どこでつまずきやすい傾向があるか」といった分析を行い、より効果のあるカリキュラムを組む、ということも視野に入れている。


 ここまで具体的なコストカットやシステムの青写真を描けるのは、駒崎氏を始め、ITに精通した教育関係者がいるからこそできるもの。ベンダー側からの受け売りでシステムを構築していないところに光明がある。現在、荒川区はタブレットPCの現場取材を断っているものの、試験導入が終わった後はノウハウを全てオープンにする予定だ。


将来の投資として


 2020年の東京オリンピックで一時的に経済が盛り上がるにせよ、その後の日本を担っていくのは、これから義務教育を受ける子どもたちである。「子どもたちが収入を得る」ことは、「私たちが年金で養ってもらえる」ことにつながってくる。そんな「将来への投資」は、労働人口が減って痛みを伴うにせよ、必ず負うことになるだろう。


 その中で、荒川区では「授業は教師が創っていく」(駒崎氏)という方針のもと、タブレットPCの導入を進めている。「道具」は“導入して終わり”ではない。教師はもちろん、保護者・自治体も積極的に意見を出し合って、理想的な教育環境を実現していく必要がある。

(中西 啓)

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