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2013/9/9  2/2ページ

3Dプリンタ 産業利用の課題(2)

経産省の3Dプリンタプロジェクトとは?


 一方「日本も3Dプリンタに予算をつけた」と注目を集めた、経済産業省の「超精密3次元造形システム技術開発プロジェクト」。この3Dプリンタプロジェクトは、前述のものとは多少異なる。プリンタの素材は「砂」。プリンタを使うのは、溶けた金属を自動車エンジンなどに成型する鋳造メーカーだ。

経産省が進める3Dプリンタ 出典:経済産業省
経産省が進める3Dプリンタ 出典:経済産業省

 経済産業省の製造産業局素形材産業室・大胡田稔氏にその理由を聞く。「リーマンショックや東日本大震災で日本経済はダメージを受け、高付加価値製品の開発につながる研究開発が必要となりました」。製造業の中でも、とりわけ鋳造業は技術革新から遅れていたという。


 鋳造部品を作るには、まず原型となる形を木やロウで作り、その周りを砂で覆う。その後、木型なら木を取り外し、ロウなら気化するまで溶かす。空洞になった砂の中へ、溶かした金属を流し込んで出来上がる。


 8世紀に東大寺の仏像が作られた時の工程と、さほど変わっていない。もちろん、CADデータでロウを作るということも行われていたが、「金属を流し込む砂自体を3Dプリンタで出力しよう」(大胡田氏)というのが今回のプロジェクトなのだ。


 これができれば、原料費や炉を動かすための電力も抑えられ、コスト競争にも耐えることができるという。「現場の工程削減による省力化、作業環境の改善も見込まれます」(大胡田氏)とのことだ。


 2013年7月から開発がスタートしたこのプロジェクトには、産業技術総合研究所、3Dプリンタメーカーのシーメット、プリンタの材料となる人工砂を提供する群栄化学工業などが参画している。経産省では向こう5年間でこのプリンタを完成させる予定だ。


低価格3Dプリンタはマニアが使いこなす


 普通のプリンタは、レーザープリンタでも本体価格は1万円を切るラインナップが珍しくない。しかし、プリンタを使うためのインク代は、カラー全てを買い揃えると5000円近くする。インクやトナーなどの材料費が、プリンタの収益構造である。


 3Dプリンタの収益モデルもこれと変わらないという。経産省のプロジェクト参加企業が発表されてから、鋳造用3Dプリンタの材料「人工砂」の提供元となる群栄化学工業の株価が目立って上がったのもうなずける。「プリンタでどこが儲けるか、ご存知の投資家の方が多い」(経産省関係者)という指摘の通りである。


 低価格化した3Dプリンタは、モノづくりの間口を広げつつある。ただ、簡単に「個人がメーカーになれる」かと言えば、そうは問屋が卸さないだろう。「『MAKERS』の著者は、かなりの3Dマニア。3Dプリンタが低価格になってきているとはいえ、CADやCGデータを自在に使いこなせるスキルがない人に、3Dプリンタは使えないと思います」(鳥谷氏)という発言はうなずける。


 大企業がハイエンド機種で技術革新を行っていく一方で、「『3Dオタク』のような“スーパー個人”が3Dプリンタを使いこなしていくのでは」(鳥谷氏)という声もある。今後、3Dプリンタから新たなビジネスを生み出すことができるのか。3Dプリンタを「趣味で使う」になるのか。もう一度冷静になってみるのもよいかもしれない。

(中西 啓)

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