3Dプリンタ 産業利用の課題(1)
読者のなかで「CAD」を使ったことがある方はどれほどいるだろうか。建築や工業製品の設計ソフト、という意味は知っていても、実際の利用人口となると、かなり少なくなるのではないだろうか。米国のオバマ大統領が取り上げて一躍脚光を浴びた「3Dプリンタ」だが、これを自在に使いこなすには「3Dデータ」の利用が不可欠になってくる。
バズワードになりつつある3Dプリンタについて、改めて産業利用の側から取材を進めた。
国内メーカーも3Dプリンタ量産体制に
3Dプリンタとは、3Dデータをもとに樹脂などを積み上げて立体的に「プリントアウト」するもの。
3Dプリンタの火付け役になった『MAKERS』の著者、クリス・アンダーソン氏は、「誰もがプロダクトデザイナーになれる時代が来た」と述べている。3Dプリンタ自体が手を出しやすい価格帯となったことは確かだ。
2013年8月、国内メーカー・オープンキューブが、20万円を切る3Dプリンタ「SCOOVO(スクーボ)」の販売を始めた。造形できる最大サイズは高さ17.5cm、幅と奥行きが15cmと小ぶりではあるものの、パーソナル3Dプリンタとしてはかなりの低価格である。2013年8月26日現在、初回から第3回の販売分は予約で売り切れの状態だ。
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| 3Dプリンタで作られた模型 |
3Dプリンタはどのくらい広まっていくのか。市場調査会社のシード・プランニングによると、2012年の国内3Dプリンタ市場規模の推定値は1620台・93億円となっている。3年後の2016年の国内3Dプリンタ市場は2012年の10倍以上、約1万6000台・155億円で、との予測を出している(シード・プランニングプレスリリース)。
2016年の予測台数のうち、パーソナル3Dプリンタは1万5000台で全体の9割以上を占める。ただ、金額ベースの市場規模、2016年予測・155億円のうち117億円が、1000万円以上の「ハイエンド機」と、100万円~1000万円の「ミドルクラス機種」。市場規模としては、業務利用されている3Dプリンタが4分の3を占めるのが現実だ。
それでは、自動車業界など、元々3Dプリンタを利用していた製造業界はどのような状況にあるのだろうか。
3Dプリンタ、製造業ではデータの扱いがネック
3Dデータの軽量化ソフトを開発しているラティス・テクノロジーの代表取締役・鳥谷浩志氏は「3Dプリンタやデータの技術は粛々とレベルが上がってきていました」と語る。この流れは現在も変わっていないというから、業界側からすれば『MAKERS』でいきなり注目が集まり始めた、というのが率直な印象だろう。
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| 車のエンジンデータ。三角形の多さがデータの重さを実感させる |
3Dプリンタで試作品を作るにあたって欠かせない3Dデータ。これを作成するCADソフトは、航空機メーカーや自動車メーカーが導入している数100万円するようなソフトから、数10万円の安価なものまで様々だ。CADデータ自体も、建築用CADから回路図用CAD、機械用CAD(メカCAD)と、様々な種類のものがある。
ここで問題になってくるのがデータの扱いだ。例えば、カメラ部品などは、メカCADと回路図用CADなど、別のCADデータが入り組み、拡張子はバラバラになる。このため、部門間でデータをやり取りするときに「アースのために開けた穴」がふさがれてしまう、ということも起こってしまうという。
また、ポリゴンで作られる3Dデータは、トヨタの「クラウン」クラスで10GB程度と、データ容量が非常に大きくなる。1ファイルでこれだけあるものを、国内の開発拠点と海外の生産拠点でやり取りするにはかなり重いデータとなる。加えて3Dプリンタに出力するときは、データをプリンタ用の拡張子(STL)に変換する必要がある。
こうした細かな課題を、データ圧縮技術で開発拠点と生産拠点とのやり取りをスムーズにするなど、コツコツと技術革新を進めてきたのが製造業の3Dデータ事情である。



