Bookshelf ~今月の本

「おしん」とその世界(1)

「おしん」とその世界

 
 

 
 

2013/11/14

映画化でリバイバルした「おしん」

 

 1983年~1984年にかけて、NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」で記録的なヒットをたたき出した「おしん」。東北の寒村に生まれた主人公・おしんが、女中奉公などの苦労を重ねて成長する姿を描いたものだ。


 2013年10月、30年ぶりに映画化された「おしん」には、稲垣吾郎、上戸彩、そして、30年前に主人公・おしんを演じた小林綾子などが登場する。今回はこの作品にまつわる本を紹介したい。


「あまちゃん」とケタ違いの、お化けドラマ


「あまちゃん」とはケタ違いのヒットだった
「あまちゃん」とはケタ違いのヒットだった

 空前のブームになった「あまちゃん」だが、平均視聴率は20%程度である。比べて「おしん」は、1年間の放送で平均視聴率が50%を超えるお化けヒットドラマだったのだ。30年前と今では視聴環境が違う(ハードディスク録画視聴やオンデマンド視聴は多分に増えているはず)ので、生の視聴率だけで比べるのは乱暴かもしれない。


 だが、「おしん」のすごさは、国内のみならず世界中に広がっていったことだろう。中国や東南アジアで放送され、果ては中東、欧州にまで広がり、これまでに60以上の国や地域で放送されたという。イランでは、市民がラジオ番組のインタビューで、理想の女性にモハメッドの娘ではなく、おしんを挙げた。これを聞いた当時の最高指導者・ホメイニ師が激怒、局関係者4人が逮捕される、というエピソードも出たくらいだ(後にホメイニ師が特赦を与えて一件落着)。


 放送から30年、今なお語られる朝ドラの脚本は「渡る世間は鬼ばかり」で有名な橋田壽賀子氏の手による。彼女の書いた放送台本を元にして書き直されたのが『普及版 小説 おしん』である。2013年からBSで始まった再放送や、前述の映画と合わせての出版であろう。台本ベースの本であるからか、セリフ回しが非常に多い。その分、上下巻で900ページある本の中では、サクサクと読める部類に入るのではないだろうか。


 実はドラマを見たことがない記者だったが、本書を読むだけでもそれぞれの情景が浮かぶ。いかだで奉公に出されるおしん、米問屋・加賀屋での奉公する姿などなど。1人の人物が、昔を思い出しながら、明治、大正、昭和の時代をたどる構成はトム・ハンクス主演の映画「フォレスト・ガンプ」に近い。


 下巻に手をつけた頃、友人から「橋田作品は、とにかく『ありがたい』って言葉が出てくるから」と聞かされる。なるほど、おしんが60代を過ぎるあたりになってくると、「ありがたい」というセリフが随所に登場する。そのうち、ト書きの部分を追っていくと、知らぬ間に石坂浩二氏の声が後ろから聞こえてくる錯覚におそわれてきた。


 橋田先生といえば「渡る世間は鬼ばかり」、という意識が深くしみ込んでいることに気付いた。

>>昭和版「おしん」がいた!