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夏の思い出、旅とともに(2)

夏の思い出、旅とともに

 
 

 
 

2013/9/5

『深夜特急』と26歳


バックパッカーのバイブル
バックパッカーのバイブル

 「海外に行こう」と思ったらどうするか? 今は格安航空券やLCCが乱立し、簡単にチケットの料金比較が可能だ。現地での情報収集も、カフェのWi-Fiとスマホの組み合わせで事足りる。宿の予約もネットでOK。プリントアウトしたバウチャー(引換券)があれば、英語や現地語ができなくても、すんなりチェックインできる。預け荷物が行方不明になった時は、スマホの翻訳機を通せば、カウンターのスタッフにもそれなりに意思は通じるだろう。余計な気を使わずに、言葉の壁もほぼクリアできる。


 「バックパック旅行」の火付け役となった『深夜特急』シリーズは、単行本で出版されたのが1986年。実際に沢木氏が旅をしたのは1970年代だ。旅の事情はこの時に比べて隔世の感がある。今では百戦錬磨の旅人でなくとも、スマホかタブレットがあれば、簡単に個人旅行が手配できる。


 それでも『深夜特急』は、今もなお一人旅のバイブルであり続けている。おそらくは沢木氏が旅に出る時の心理、そして異文化に触れた時の描写があるからだろう。


 沢木氏が旅に出たのは26歳。ルポライターとして地歩を固めつつあった時で、海外へ行くのも初めてではない。沢木氏は、26歳という年齢を「旅の適齢期」と主張している。若すぎると、恋愛や現地でのカルチャーショックなど、様々な驚きをいっぺんに引き受けなければいけない。年を重ねすぎると様々な経験が終わっているので驚きを見出しにくい、ということだ。


 26歳ならば、そこそこ恋愛の浮き沈みを経験して、自分で稼ぐあてもあり、一通りの人づきあいも覚える。しかし、未知の世界もまだ残されている。一歩海外へ出た時、自分の人間的な背丈はどれくらいあるのだろう…。


 そんな時、あえて抱えている仕事を置いて一人旅に1年以上を費やすのは、ある意味、蛮勇と呼べなくもない。会社勤めならば、仕事を捨てる怖さもある。しかし、一度旅に出ると決心したならば、その決断自体が成長の糧になるのだろう。自分の生きざまを見つめ返すにも、一人旅はうってつけなのかもしれない。

>>国内旅行も、オツなもの